2024年07月29日

あの日、読んだ本を探して

昨夜来てくれたショウヘイ君。
子供の頃、大変な読書好きだったらしい。

彼が中学生くらいの頃に読んだ本で
非常に心惹かれたモノがあったという。

時代はまったくわからないけれど、
とあるヨーロッパの国の監獄が舞台だそうだ。

一人の男がそこに収監された。

そこでは、ありとあらゆる国から囚人がおり、
それぞれが自国の言葉で
話をしているのだそうだ。

色々な言語が飛び交い、少しずつ
男は他国の言語も理解するようになる。

そこで会った一人の男の話は非常に面白く、
機知に富んでいたという。
主人公は、その魅力的な男と、
いつかお互いに出獄したら、
彼が住む国で、会おうと約束したらしい。

その男が先に出所、その何年かあと、
主人公も監獄から出て、彼から聞いた
国へと向かう。

ただ、どこを探しても、
その国らしき場所はなく、
色々探しても、あの男が
話していた言語すらなかった、
という物語だったそうだ。

ショウヘイ君は、そんな古典文学って
聞いたことはないですか?と聞かれ、
僕や他のお客さんはまったく
耳にしたことはない、そう答えた。

彼はどうネットを駆使しても、
その話には行き当たらないと言う。

ひょっとして、自分の妄想や思い込みで
その話を頭の中で作り上げたのかも、と
笑っていた。

どなたか、そんな小説を読んだことが
あるだろうか。
ひょっとして、とても有名な文学だったりして。

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posted by みつあき at 17:50| Comment(0) | 書籍 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年05月16日

ドメニコ・スタルノーネ「靴ひも」を読んで

イタリアの作家が書いた小説「靴ひも」。

今回、この本を読むきっかけとなったのが
今、オンラインで開催されているイタリア映画祭で
配信されている同名の映画の紹介があり、
「とにかく、映画よりも本が面白い!」
と言われていたため、
早速、読んでみた。

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登場人物は、夫婦(20代後半から60も過ぎた二人を
描いていく)と、二人の子供(姉と弟)、
そして夫の愛人がメインだ。

小説は三章に分かれていて、
第一章は、妻から夫への手紙だ。
結婚して12年で女を作り、彼女の元へ
出て行ってしまった夫。
それから4年経過して、
彼に送った文面が綴られる。

「あなたは浮気によって、いかに私を裏切り、
自分はどれだけ傷つけられたか」という
怒りとも悔しさとも言えない言葉が
延々と並んでいる。

第二章は、まったく文体も代わり、
夫の独白だ。
第一章から、30年近く経ち、
年老いた二人は、一見、元のさやに
戻っているようで、連れ立って、
ヴァカンスへ出かけるところから始まる。
しかし、それぞれのその心の底には
当然のように色々なモノがある。

過去、分かれていた時期、子供と会いに
たびたび家を訪れた自分と
妻、そして愛人との間に
どんなことが起こったのか。

そして、ヴァカンスから
帰ってきたマンションは、
部屋に強盗らしき人間が入った形跡がある。
家中、めちゃくちゃに荒らされ、可愛がっていた
猫の姿さえいなくなっている。

第三章では、この強盗らしき人間と
その行為を見せながら、
身勝手なふるまいで家族を壊した夫と、
感情的にぶつかっていき、暴言を吐き続けた妻を
一章、二章とはまったく違う角度から
書かれていく。これまた文体も違う。

その二人のどうしようもない傲慢な人間の哀れ、
それでもでも、いたしかたない不甲斐なさが
露呈されていく。

タイトルの「靴ひも」は、
この夫が自分の息子と
同じ結び方で結んだ靴ひもを通じて、
家族の絆、人間の結びつき、が
タイトに見えながらも緩いモノかを表しているようだ。


なかなか先が読めない、というサスペンス色も含めて
非常に面白く読むことが出来た。
しかしながら、僕は
その登場人物それぞれに
どこも共感出来ない、という
心地悪さも同時に感じた。

ちなみに、オンラインで同名の映画も観たけれど、
小説では客観的にしか描かれていない
夫の愛人が、かなりクローズアップされている。
それはそれでわかり易くはなっていたけれど、
小説のどうなるんだろうか、という
ワクワク感は欠けていた。

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2021年05月09日

桐野夏生「日没」を読んで

緊急事態宣言が続き、ここのところ読書量が
ぐんと増えた。

今まで積ん読で置きっぱなしになっていたモノ、
また前から読みたかったモノなどを
書店やKindleで買ったりしている。

そうそう。
店に来てくれるお客さんのマサアキは
ものすごい読書家で、なおかつ自分が
読み終わった本で、興味がある?と
置いていってくれる。
有難い。

今までおそらく10冊、いや、それ以上の
本をいただいたりし、その中でノンフィクションの
エッセイや随筆はほとんど読ませてもらったが、
ここに来て、彼が好きだという小説も読み始めた。

その中で、一昨日、1日で一気に読んだのが
桐野夏生氏が書いた「日没」だった。


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いやあ、これ、凄かった。

内容は、40代の一人の作家が、
「文化文芸倫理向上委員会」(通称ブンリン)なる
国の組織から突然呼び出しを受ける。
そして、指定された日、着の身着のままで
崖に面した海辺にある孤立する要領施設に
連れて行かれるという話だ。

療養施設と言っても、
ほとんど監獄かと思えるような独居房で、
彼女は、「社会秩序に準じた出来の良い(!)
小説を書け」という教育を受ける。

ほぼきちんとやり取りも出来ない、
何十人も有名作家たちが拘束されていることを
知った彼女は、いつ開放されるか
わからないこの監房のような場所で
いかに孤独と向き合い、
自己を失わないでいるか。

そこに出てくる公務員たち、
医者、警備員、そして身の周りの世話をする人間、
さらにすれ違うどこかで会った作家たち。
それぞれの描写が、この先、
どうなるのだろうかと高揚させられる。

僕は桐野氏の作品は映画化された「OUT」や
「グロテスク」などを読んでいるけれど、
サスペンスフルな話の運びが、非常に上手い。

そして、この小説、発想の面白さを超えて、
とにかく怖いのだ。


国家が「正義」ということを盾に
ありとあらゆる自由を奪っていく。
それは、今現在、ありとあらゆる形で
理不尽までに抑えつけようとしているように見える
「法治国家」の名の下に、
しっかりと管理されている社会が見えてくる。

そこには僕たち、同性愛者の問題も含む、
昨今、大きな問題になっている
入管難民法など、多くのことを考えさせられた。

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2020年11月13日

書店店主の悩み

昨日、1年ぶりに地方都市で書店をやっている
トシオが、出張帰りに寄ってくれた。

コロナ時代になって、どうか、という前に
街の書店に人が来なくなって久しいけれど、
今年になって、どうなった?と尋ねてみた。

それが、彼の書店近くの大型書店が
自粛期間、クローズすることになり、
その時期、彼の書店に人が
どっと詰めかけたのだそうだ。

そういう意味では、近年稀に見る
人の多さだったと言う。

そして、それに追い討ちをかけるように
「鬼滅の刃」の大ヒット。
映画が始まる前に原作漫画、
入荷しても、入荷しても、
多くの人が買いに来る。

ただ、不思議だったのは、22巻ある中で、
たとえば、5巻と、7巻と、11、14、19巻、
というような買い方をした人がいたと思えば、
まったく別の人が翌日、1巻、3巻、6巻、
というようにおかしな買い方をする。

何故だろうと思っていたら、数日後、
それがフリーマーケットに出品されている
ような情報が入ってくる。

書店では売り切れをするところも続出。
そのあと、フリマを見ると、少し高音で
売買されているのだ。

上のような不思議な買い方をした人によって
買い占められたあとで、小学生や
中学生がお小遣いを持って一冊だけ
買いに来ても、手に入らない状態。

店の売り上げが上がっても、
こういう事態に気が重くなる日々が続いているらしい。

コロナだからなのか、それ以前の問題か、
日に、日に、ストレスフルな時代に
なっていることは確かなようだ。

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