6月2日
素晴らしい劇場、Metrographで、
日本未公開のゲイ・ムービー"Beau Travail"
(英語字幕版で公開された時は「美しき仕事」だった)を観る。
20年近く前に作られたなんて思えない見事な絵の繋ぎ。
同性愛シーンがまったく出て来ないけれど、
兵士たちの訓練シーンは同性間のエロスそのもの。
「ムーンライト」は、大きな影響を受けたようだ。
観ることが出来て、ホントに良かった!
この日の夜は"Come from away"を観た。
911で空港が閉鎖されアメリカに帰る事が出来ず、
カナダのガンダーという街に降り立った人々を描く群像ミュージカル。
12人のキャストが、それぞれ複数の人間を演じていて、
まるで映画を観ているような気になる。
「ハロー・ドーリー!」、「ハミルトン」の次に
取りにくいチケットだそうで大歓声。
変化のない背景に椅子を動かしていくだけ、というセット。
想像力だけで見せる、というテクニック。
とは言え、観客が笑い、盛り上がるほどに、
なかなか英語についていけない悔しさも味わうモノとなる。
本気で勉強しなければ!!
6月3日
土曜日のソワレは、待ちに待ったオフの「スウィーニー・トッド」。
200人も入らない小劇場でこの豪華キャスト。
劇場内、明るいうちはレストランかのような状態で、
お客さんは人肉ならぬスウィートパイを食べる。
このあと、客殿が落ちるとまさかの設定に。。。
小さなバーレストランのような作りで、長テーブルの上を、
観客の真横をところ狭しとキャストが歌う。
それもあの「オペラ座〜」や「レ・ミゼ」のメインをやった
ノーム・ルイスが自分の50p前で熱唱というミラクルな時間!!
これを至福と言わず、何と言うか。。。
今まであらゆる場所、あらゆるキャストで何度観ただろう。
そのたびにソンドハイムの楽曲に胸を焦がされ、様々な演出に鳥肌がたつ。
ノームは素晴らしいが、この演目で肝となるラヴェット夫人、
「ファインディング・ネバーランド」のキャロライン・カーメロ、
頑張っていたけれど、かつて観た役者に比べるとすこし毒が弱いのが残念。
夜は「アナスタシア」を観た。
イングリッド・バーグマンの「追想」を
元にしたミュージカルアニメの舞台化。
消えたロシアの皇女アナスタシアは本物かどうか。
きらびやかで豪華な話で、多くはLED映像の背景処理だけど、
それを効果的に使っているのが、何ともブロードウェイ。
特に列車の大道具と映像処理は見もの。
衣装もダンスもなかなか。でも全体的に大味(笑)
日本でも人気の「レ・ミゼラブル」バルジャン俳優の
ラミン・カリムルーは今回脇役に徹していて、
相変わらず格好は良いものの、出演時間も全体で3、40分か。
ただ、この作品のもうひとつ趣きがないことが
トニー賞にノミネートされなかった理由だろう。
来年の「アナと雪の女王」もこんなふうになるんだろうか。
6月4日
日曜日のマチネは"Bandstand"を観た。
戦争からの帰還兵が、スウィングバンドでスターを目指すという話。
戦場で亡くした友人のフィアンセを思う、
という切なさがなかなかドラマを深くしている。
戦争後遺症、そして反戦というのは、
「アメリカン・イディオッツ」でもディープに描かれたが、
そういう意味ではまさにアメリカらしい作りとなっている。
今回、観たショウで最もダンスの見せ場が多いミュージカル。
調べると振付が「ハミルトン」のブランケンビューラー。
これで2連続になるか。また、主演の恋人役が
「シンデレラ」をやっていたローラ・オズネス。
当たり前だけど、役に寄ってまったく違う顔を見せるのは天晴れだ。
2年ぶりの「スリーブ・ノー・モア」を体験する。
今まではキャストを追いかけて、クルージングスポットさながらの
暗がりを上へ下へと走り回ったが、さすがに歳も歳だし(笑)
今回はゆっくりとひとつひとつのパフォーマンスをじっくりと観ることにした。
そうすると、今まで見えて来なかった「マクベス」像が見えてくる!
それにしても、エロくて、怖くて、
なおかつ前衛的なこのパフォーマンスを考えたプロデューサー、
ランディ・ウィーナーは凄い。
上海でも始まったって言ってたけれど、どうなんだろうか。
色々な意味で(消防法、風営法など)
日本ではこのままじゃ無理だろうなあ。。
6月5日
月曜日は、ほとんどの劇場がクローズ。
その代わり、歌手のマイケル・ファイヤスタインの名前を
冠にした54 Belowというライブハウスのオープン5周年を祝うために、
ブロードウェイスターが集い、歌うというイベント。
"FEINSTEIN`S/54 BELOW 5 Year's Annibersary
ALL-STAR CELEBRATION"を観た。
ローラ・ベナンティが実母親とビヨンセのSingle ladiesを歌ったかと思うと、
昨日観たばかりのローラ・「アナスタシア」・オズネス他
3人で、ディズニーのプリンセス・メドレーも楽しい。
圧巻はアリス・リプリーが「この作品で注目されたけれど、
いつか将来主役のノーマをやりたい」と
「サンセット」の"Never say goodbye "を歌った時。
もちろんそのあとに続く89歳のマリリン・メイもまったく衰えを知らず。
ラストはもちろん、ファイヤスタインのブロードウェイを
ベースにした数々のヒット曲。良い一夜だった。
6月6日
最近の若いアーティストでここ一年間でよく聴いたアルバムが、
エド・シーランとザ・ウェークエンド。
そのザ・ウェークエンドのライブを観にブルックリン、バークレイズセンターに。
7時半開演なのに始まったのが9時半過ぎ。
まあ、こんな事はこちらじゃザラなんだけど。
終わってマンハッタンに到着すると0時だなんて
ティーンエイジャーは大丈夫か?といつも思う。
それも火曜日だ。
ライブというのは、そのアーティストが旬の時に、
いかに観ることが出来るか、というのは大切。
ブロードウェイのオリジナルキャストと同様に。
彼のパフォーマンスは、エロティックなR & Bというか、
ミステリアスなファンクと言うか。
27歳でこの音作り!と思っていたけれど、
生のステージは若さがはち切れていた。
そして、まさかのレイ・シュリマーが出て来て
共に大ヒット曲Black Beatlesをやるとはビックリした。
6月12日
ニューヨークからメキシコ、そしてキューバに来て
まさかのブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブのライブを観た。
あの映画公開からもう20年近くが過ぎようとしていて
多くの奏者は、亡くなったりしているけれど、
残された高齢者、そして亡くなった人の息子さんなどが
素敵なキューバン・ミュージックをどんどん披露。
驚くべくテクニックのみならず、
素晴らしい演奏、歌を聴きながら、
観客も歌い踊り、
深夜まで演奏が続いた。
これがモヒート付きで2000円くらい、
と目の玉が飛び出るほどの安さだった。
6月16日
ハバナからニューヨークへ3時間弱。
特に何の問題もなく再入国出来たけれど、飛行機が少し遅れて、
予約していたブライアン・ストークス・ミッチェルのライブ。
タクシー、荷物持参で駆け込む。着席5分後に始まった!
「ジェリーズ・ラスト・ジャム」「蜘蛛女のキス」
「ラグタイム」「ラ・マンチャの男」「スウィーニー・トッド」
「キス・ミー・ケイト」「シャッフル・アロング」
最も多く作品を観ている人かも。
カンパニーの難曲"Getting marry today "を
何役の分も一人で歌う。
その深く響くあまりに美しい声に震える。
6月17日
ゆっくり飲もうかと歩いていたら、
何と3年前にブロードウェイで観た"FUN HOME"を上演してる。
当日券を聞いたら最前列ど真ん中。
好きな作品だし、もうNYでは観られないし、思わず買った。
舞台を見下ろすように囲む円形のブロードウェイとは違って、
普通の舞台上で行われる。
基本的な演出は同じだけれど、感覚的にまったく違うのが不思議。
とにかく舞台がデカイのが難点。
でも、ゲイの父親とレズビアンの娘の確執を
描いたテーマと、楽曲には何度観ても泣ける。
6月18日
前日のフィラデルフィア美術館に続いて
とても評判が良いバーンズコレクションに来た。
美術館について、ここに書くことはないけれど、
あまりに素晴らしかったので、ちょっとだけ。
いやあ、これは参った。凄い!
普通、壁横一列に並べられている絵を
観ていくというのが通常の美術館だが、
とにかく所狭しと、バーンズ氏の収集した作品がテーマや、
モチーフ、または彼自身の想像力によって並べられている。
それも、ゴッホ、ルソー、ルノワール、セザンヌ、
マティス、マネ、ピカソから日本画まで。
印象派好きは是非訪れるべき。
とても素晴らしいのは、
無料で美術館のアプリをダウンロード出来て、
ひとつひとつの作品の解説を聞くことが出来ること。
それも予約制なので、ゆっくりと椅子に座って眺める事が出来る。
午後はすべて費やしたけれど、まったく問題ない。
必ずまた来たい。今回の旅の美術館ではベスト。
この日の夜は、U2「ヨシュア・ツリー・ライブ」
初夏の屋外ライブは海外に出るたびにほぼ毎回観ているけれど、
夜8時過ぎても明るく、そして風が気持ちいい。
一見ちゃっちく見えるセットだけど、これが実は凄い。
オープニング・アクトはルミニアーズ!
たっぷり1時間!
アコースティックで素敵なロックで盛り上がった。
そして、U2!!
何故フィラデルフィアでか。
それは30年前のこのツアーがアメリカの
ライブ記録を作った場所だから。
それだけに思い入れも深いアルバムであり、
ライブ会場なのだ。
1対5ほどの横長大スクリーンに曲ごとに
まったく違う凝りに凝った映像を映し出し、
前半はヨシュア・ツリー以前のフォークロック、
後半は90年代以降のテクノを取り入れたものに変わる。
もちろん、メッセージ性は相変わらず強い。
ボノも57歳。でも、30年前!
東京ドームで観た時とほぼ変わらない。
世の中の偉大な女性に捧げると歌った
「ミステリアス・ウェイズ」のバックスクリーンには、
ミシェル・オバマやヒラリーのみならず、
オプラ・ウィンフリー、エレン・デジェレネス、などが映った。
6月19日
毎回、往年、のブロードウェイ・ミュージカルの楽曲を、
オールスターキャスト15人で歌い、踊る
"Broadway by the Year "が、このの演目。
今回は、2007年から去年までのミュージカルの名曲を。
前回、54 belowでも登場したアリス・リプリーも出演。
今回の見せ場は、リプリー自身の「ネクスト・トゥ・ノーマル」や、
「ファルセットズ」でトニー賞にノミネートされた
ブランドン・ウラノウィッツの「巴里のアメリカ人」、
圧巻は、出演者全員による「アナスタシア」と「
ヤング・フランケンシュタイン」の見事なタップダンス!
楽しかった。
6月20日
ブロードウェイ最後の演目ベット・ミドラー「
ハロー、ドーリー!」の前日に
火曜日だけ、やっているドナ・マーフィー版を観た。
大好きはなドナは、歌もダンスも良い。
でも、翌日観たベットの存在感は凄過ぎた。
ドナに欠けているオーラ全開。
コメディエンヌとしても、歌手としも完璧!
舞台はとてもオールドファッション、
そして芝居も臭い。
でも、すべてがベットに支えられている。
Amazing!とはこの事!!
発売日初日にゲットしたから、
前から4列目の中央。
今では500ドルも、600ドルもする、
と言われるこのプラチナチケットを200ドルそこそこで
買えたのも、嬉しかった。
20年近く前に観たキャロル・チャニング、
そして映画版のバーブラ・ストライサンドも
遥かに超えている。
この演目を最後に持って来たのは、
本当に、本当に良かった。
これで今回の旅行記は終わり。
この長旅から帰国して、もうひと月が経った。
まるで、夢を見ていたかのような時間。
さあ、次の旅行まで、また頑張って働きます。