2018年10月23日

ナショナル・シアター・ライブ「フォリーズ」

休みの昨日、ミュージカル好きな友人たちと
イギリス、ウエストエンドの舞台を
そのまま映画館で上映する
「ナショナル・シアター・ライブ」の
「フォリーズ」を観てきた。

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このライブ映像は、今年になって
ゲイの舞台「エンジェルズ・イン・アメリカ」や
「アマデウス」は素晴らしかった。
過去だと「夜中に犬に起こった奇妙な事件」や
「橋からの眺め」など興奮させてくれる舞台を
上映してくれていて、そのたびに紹介したい、
そう思っていながら、なかなか書けなかった。

何せ、限られた劇場で、
それもほぼ一週間の上映なので
僕が休みの日に観て、ここで書いても
あと数日しか公開日がなかったりするからだ。
それでも、今回は書かずにはいられない、
それほど素晴らしい体験だった。


内容は、解体が決まった古い劇場に
その昔、出演していたコーラス・ガールが
その連れ合いを連れて、
再会パーティに出席する話。

昔から微妙な関係だったふた組の男女が
結婚と破局に向かいそうなシークエンスを
50歳に差し掛かる現在と
20代だった過去の話が、
8人の老若男女によって
交差して見せてくれる。

かなりドロドロとした4人のこの話を
30人以上にもなる多くの出演者が
巧みに演じている。

楽曲は僕が最も尊敬する
「イントゥ・ザ・ウッズ」や
「スウィーニー・トッド」の
スティーヴン・ソンドハイム。
歌手にとって難解と言われながらも
美しく、心惹かれる楽曲の数々。

そして演出もさることながら、
美術、衣装など見どころは山ほど。

過去への郷愁、そして華やかなレビュー。

これほど成熟した大人の舞台を
映画館で出会うことが出来て良かったけれど、
本心を言えば、無理しても
ロンドンで観たかった。

気になる人は↓


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GAY BAR BRIDGE
〒160-0022
東京都新宿区新宿2-13-16  SENSHOビル 6F

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2018年07月15日

アメリカ旅行記 舞台編 その2

舞台編1からの続き


●”Broadway by the year 1988-2017”

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年に数回、The Town Hallで行われている
ブロードウェイの歴史を、多くのミュージカルスターに
より、歌い踊られるショウ。

今回は、1988年から2017年までに上演された作品の曲を
出演者35人たちが歌い、踊るというモノ。
出演者は「南太平洋」リバイバルのウィリアム・マイケルズ、
「恋はデジャ・ヴ」のレベッカ・ファウルケンベリー、
「三文オペラ」などのブライアン・チャールズ・ルーニーなど。

素晴らしい歌声だけではなく、
タップを始めとするダンスも見もの。
ただ、ここでのコンサート、
美術セットがないのはともかく、
照明くらいはもう少し凝っても良いのでは、とも思う。

使われた楽曲で、新しいところでは
「アナスタシア」"Come from away"
"Dear Evan Hansen"、「1812年のグレート・コメット」など。
新しい、と言っても、過去の寄せ集め
(という言い方もどうだけど)
「プリンス・オブ・ブロードウェイ」からの
「ウエスト・サイド物語」や「オペラ座の怪人」などが
入っているのは、どうかとも思った(笑)


●"Beast in the Jungle"(密林のけもの)

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今回のオフの2本目。
ヘンリー・ジェイムズ原作の短編の舞台化。
これはミュージカル、というよりもダンス中心のモノ。

主演は、日本でも「プリンス・オブ・ブロードウェイ」で
来日し、NYでも「オン・ザ・タウン」で
主演を務めたトニー・ヤズベク。
彼のダンスはものすごく定評があり、
その相手役を元アメリカン・バレエ・シアターの
プリンシパルだったI.ドゥヴォロヴェンコが務めていた。

昔、ナポリで出会った男と女。
男の自分の心の中に住む「けもの」によって
彼女の元から去っていく男。
その数十年後、年老いた彼と甥(ヤズベクのふた役)、
そして彼女と彼女の旦那。
そこに流れる苦悩を描いている。

名作曲家ジョン・カンダーが作った曲で、
主人公たちをとりまく6人ほどのダンサーが
男のトラウマを小道具、照明の変化など、
さまざまな形で表現していくところは
とても見応えがある。

決して大きくない舞台の中で、効果的なセットで
エロティックなダンスをたっぷりと見せてくれて満足した。



●「ミーン・ガールズ」"Mean Girls"

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東京で舞台、特にミュージカルに行くと
下手すると9割が女性で、気恥ずかしさが増すが、
ブロードウェイでは、ほぼ男女半々。
ただ、この舞台は、ティーンエイジャーからOLなど
多くの女性が詰め掛けていた。
(それでも7割くらいか)

12年以上前に作られた映画を改めて舞台化。
ケニアで生まれ育った白人の女のコが、
シカゴの高校に転校してくる。
そこで女子同士の嫉妬やいがみ合い、裏切りに
巻き込まれて行くというストーリー。

あちらに住んでいるアメリカ人の友人(40代後半)が
観て「是非とも、観るべき」と騒いでいたので
ちょっと期待していた1本。

スマホやSNSを中心に作られているのが
いかにも現代風だが、ここには"Dear Evan Hansen"のような
苦悩や深みはなく、ただ、ただ楽しくキャンピーな作り。
そのあたりが、女のコや、若いゲイが
楽しめる一作なんだろう。

主演のエリカ・ヘニングセンは実際25歳らしいが、
もう少し老けて見えてしまい、
高校生にはちょっと無理がある。

セットはLED映像を全面に使ったモノで簡素。
ダンスシーンもそれなりにはあるものの、
個人的には今回の旅の中では、
少し残念だった1本だった。
若者が操る英語やそのスラングなどに
乗り切れなかったという悔しさもあるのだけれど。

それにしても「アナと雪の女王」よりも
さらにチケットが売れているというのが凄い。



●”Half Time"

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毎週、木曜日の昼間は
ニュージャージーのPaypermill Playhouseという劇場が
マチネをやっていて、興味があると覗くのだが、
今回は、「キンキー・ブーツ」の演出、振り付けや、
Broadway Baresを仕切っているジェリー・ミッチェルが
演出、振り付けをしている新作がある、
というので行って来た。

内容は、全米バスケットの試合のハーフタイムショウの
オーディションに受かったシニア世代の面々の人生を
見せながら、練習、挫折、そして成功までを描いていくというもの。

凄いのが、キャスト。
「コーラス・ライン」のオリジナル・キャスト、
ドナ・マケックニー、
「ザ・ウイズ」のオリジナル、アンドレ・デシールズ、
"The Life"でトニー賞をとったリリアス・ホワイト、
ほか、「ドロシー・シャペロン」のジョージア・エンゲル
という豪華キャストが共演している。

この70歳前後のキャストが、驚くべきパフォーマンスを
見せてくれるラストシーンには胸を打たれる。


●「アナと雪の女王」"The Frozen"

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まったく期待していなかったけれど、
これが予想を裏切り、かなり良く出来ていた。
基本的に映画をよく踏襲している。
特にエルサとアナのキャストは、アニメそのまんまと
思えるほど似ている。
衣装もほぼ同じ感じ。
逆に言えば、「ライオン・キング」のような
オリジナリティがないとも言えるけれど、
この作品に関しては、やはり映画と重なることを
望むファンが多いということかも知れない。

セットは豪華な大道とLEDアニメーションを
うまく組み合わせて、かなり効果的。
城や街が音楽と共に凍っていくシーンなど
決して安っぽくならない。
雪だるまのオラフは、「ライオン・キング」の
ティモンとプンヴァのように、キャストが操り、
トナカイのスヴェンは着ぐるみだけど、
これがまたうまく表現されている。

二幕のサウナの全裸群舞や、
トロールに変わる「隠れた民族」たちのマッチョダンスは
まったくのオリジナリティがあって
素晴らしい。
劇場中はいちいち興奮の渦。個人的にも満足だった。


●「回転木馬」"Carousel"

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かつて観たブロードウェイで観たミュージカルで
最も好きだったのは何かと聞かれると、
迷わずに答えるのが、94年に
リンカーンセンター(今回の『マイ・フェア・レディ』の劇場)で
観た「回転木馬」だ。

なんと言っても、「ミス・サイゴン」などの演出家
ニコラス・ハイトナーと、
今年来日公演をした「メリー・ポピンズ」の
美術セットをしたボブ・クローリー、
そしてケネス・マクミランの振り付けも
すべてが最高だった。

それから四半世紀近く経ってのリバイバルは、
まったく違う演出ながら、
やはり今回観たミュージカル作品の中では
ベストだった。

そんなワケで「マイ・フェア・レディ」と共に
一回の渡米で、二度同じ演目を観たというのは
オードラが出演しなかった「シャッフル・アロング」
くらいだったけれど、
今回の演出版、オリジナル・キャストで
しっかりと目に焼き付けておきたかったのだ。

オープニングの序曲。歌はまったくないものの、
役者は口を動かしながらも、声は出さず、
ダンスで回転木馬を見せていく。
それから何度も、何度も、息を呑む
ダンスシーンが出てくる。
群舞もソロも非常にクオリティが高く、
今年のトニー賞をとった
ジャスティン・ペックの振り付けは秀逸。

主演のジャスティン・ヘンリーは
"Scottsboro Boys"の時から気になっていて、
この作品でも深みがある声を披露してくれている。
NYのジムで見かけたこともあったけれど、
本当にいい身体をしているのも見どころ(笑)

声、と言えば、オペラ界から参加している
ルネ・フレミングの"You'll never walk alone"は
たっぷりと泣かせてくれるし、
キャリー役ジュリー役の二人の女優も
申し分ない。

ラスト、卒業式では不覚にも涙が止まらず、
これほど泣けたのも、前回の「回転木馬」以来だった。
この作品に関して、書き出すときりがないけれど、
とにかく、本当にこの作品に出会えて良かった。


●「真夜中のパーティ」

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今回、NY旅行の目玉が、このゲイの舞台の
50周年記念公演だったと言ってもいい。
という訳でこれが最後だけど、
少し長くなります。

50年前に作られたゲイが集まって
誕生パーティをやる。
登場人物は9人。
基本的にはまだまだクローゼットな連中
(とは言っても、オネエ丸出しというのもいる)
の中に、ストレート(と言っている)男が
ふらりと訪れてしまうことで
まさにドラマチックな展開となる、という話。

映画にもなっているバージョンは、
舞台のオリジナルキャストそのまま出演していて、
その時は7人がゲイだったようで
当時の彼らはすべてエイズで亡くなったとのこと。

今回のキャストはすべてオープンリーゲイの
著名タレントということで話題になっていた。

部屋の持ち主マイケルは、
テレビドラマ「ビッグバン・セオリー」などで
有名なコメディ俳優、ジム・パーソンズ。
皮肉屋で意地悪だけれど、
それでもデリケートな心を
これはトニー賞もの!と言われる
素晴らしい演技で表現してくれる。

そのパートナー?とも思われる
ドナルド役に、「マジック・マイク」や
ドラマ「ホワイト・カラー」のイケメン、
マット・ボマー。
最初に聞いた時は、彼がドナルド?と
思ったけれど、非常にバランスが良い形で
見せる役を、彼じゃないと、という見せ方で見せていて
これはグッド・キャスティング。
パンいちや、シャワーシーンなどで
彼の良い身体も拝める、というおまけ付き。

誕生日を祝われるアバタ顔の激しい性格のハロルドを
新「スター・トレック」でスポットを演じたりの
ザッカリー・クイント。
彼はメイク次第でイケメンにも醜男にも
簡単に変われるけれど、ここでは後者を
気持ちよく、観客にとっては気持ち悪く演じている。

この舞台をある意味、引っ掻き回す
オネエのエモリーをやるのが
前に「ラ・カージュ・オ・フォールズ」のリバイバル時に
メイド?役をやっていたロビン・デ・ジーザス。
小さな身体でバタつく様は、
あの時のほうが良かったような気がするのは
僕だけだろうか。

恋人がいる癖に遊び人のラリーを演じるのが
ドラマ「GIRLS」や、舞台「ブック・オブ・モルモン」の
アンドリュー・レイノルズ。
彼は「ファルセットズ」でも堂々とゲイの役で
歌を披露してくれていたけれど、ここでもさすがの存在感。

また、ラリーの恋人で、結婚した過去を持つ
ハンクの役は、「デスパレートな妻たち」でも
ゲイの役をやっていたタック・ウィトキンス。
マッチョで好感が持てる感じは、
実際、舞台が終わってからも、真っ先に
出待ちをしているファン全員にサインをしていた。

トラウマを抱えながら、それでもエモリーと共に
明るく振舞おうとする黒人のバーナード役には
これまたエモリーと共に「ラ・カージュ〜」に出演していたり
ドラマ「グリー」にも出ていたマイケル・B・ワシントン。
彼の役は本当に難しく、どう評価して良いか、
僕にはなかなかわからなかった。

ストレートだと言うアラン役の
ブライアン・ハッチソンは、
ちょっと年齢的に老け過ぎている感じと、
アランのあのデリケートな
ストレートか、ゲイかわからないような
ミステリアスさが少し欠けているような気もした。

最後に若き(と言っても、本人は32歳らしいが)
カウボーイをやるチャーリー・カーヴァー。
彼も「デスパレートの妻たち」に出ていたが
あんな若かった、と言うか子供みたいだった彼が
こんなマッチョな男に変身しているとは、ビックリだった。


初演から50年。
LGBTに対しては世界中が大きく変化した。
とは言え、多くの人たちの心の中には、
まったくこの舞台と変わらない部分も
山ほどあるし、ある意味、
自分に対しても鏡のように
見え隠れするところを考えながらも楽しんだ。

最初に中学校の時に、この映画と対面し、
何がなんだかわからないかったことも思い出しながら、
改めて素晴らしい脚本だったと思った。



●チタ・リベラ ライブ
Kathryn W. Stein Memorial Concert featuring Chita Rivera

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NY最終日は、ミュージカル界のレジェンド、
チタ・リベラのコンサート。
まさかの85歳を超えているとはとても思えないほど、
声に張りがあり、ダンスまで軽やかに踊る。

実は、僕は友人の誘いで、
25年ほど前に「蜘蛛女のキス」を
やっていた彼女の楽屋を訪ねたことがあった。
そこには草笛光子さんから送られた暖簾が
かけられていて「とても気にいっているのだ」と言っていた。

その「蜘蛛女のキス」はもちろん、
「ナイン」「バイ、バイ、バーディ」
「リンク」「貴婦人の訪問」"The Visit"などまで
ほとんど自分が出演した楽曲を歌ってくれた。

「ウエスト・サイド物語」や「スウィート・チャリティ」の
舞台裏の話で、いかに当時緊張していたか、
というのも面白かったし、
「シカゴ」では相手役だったグウェン・バートンを
モノマネしながら、二人分の歌を。

彼女が今後、またブロードウェイの舞台に
上がるのかどうかはわからないけれど、
こういう形で観ることができたのは
至福の喜びだった。


長々と書いたけれど、
今回、観ることが出来た作品群。
いつも多くの舞台、ライブに巡り合うけれど、
今回は特に質が高いモノを目にすることが出来た。

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新宿2丁目 Gay Bar Bridge(ブリッジ)
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2018年07月08日

アメリカ旅行記 舞台編 その1

さてさて、旅のブログはサクッと書いたけれど、
また何か思い出したら、書くことにしよう。

例のごとく、この前のライブ編に続いて、
今回は、舞台編。


今回観たモノ(舞台編)

●オードラ・マクドナルド
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彼女は今回、コンサート枠なんだけど、
一応、ミュージカル・スター、ということで
「舞台編」のほうに入れることにする。

現存するミュージカル女優の中では
声の張りや存在感としては最高峰と言っていいと思う。
僕は彼女が、まだほぼデビューしたばかりの
「回転木馬」を観て、その後、カーネギー・ホールで
一夜だけやったヒュー・ジャックマンとの
「回転木馬」も観ることが出来た。

「マリー・クリスティーン」
「ポギーとベス」
「レディ・デイ」
「シャッフル・アロング」
と観たモノを数えると
「回転木馬」も入れると、ちょうど5本だった。

今回のライブは、もちろんミュージカル中心だ。
「フィオレロ」から始まり、ロジャーズ&ハマースタインの
「ステート・フェア」、「晴れた日に永遠が見える」
ジェイソン・ロバート・ブラウンの"SONG NEW WORLD"や、
彼女が主演をした「ポギーとベス」からも。
個人的には圧巻だったのが「シー・ラヴズ・ミー」の
「ヴァニラ・アイスクリーム」
観客と共に歌ったのが「マイ・フェア・レディ」の「踊り明かそう」。

ソンドハイムのモノも「リトル・ナイト・ミュージック」
「カンパニー」「イントゥ・ザ・ウッズ」
ソンドハイムと共に出たテレビ番組で、
自分が歌っている前にモニターがあり、
自分の歌っている姿を見ながら歌うのは初めてで
「これほど大口を開けて歌っているのか」と
凄く恥ずかしかったと笑わせてくれた。
ラストはテレビのライブでやった
「サウンド・オブ・ミュージック」が
いかに大変だったかを語りながら、「すべての山に登れ」
これは鳥肌もの。
そして、アンコールは「虹の彼方に」だった。

「回転木馬」で彼女を観た時は、まだ20代だったが
もう50歳に手が届こうとしている。
そういう意味では、今が絶頂期なのかも知れない。
この機会に恵まれたことは幸せだった。



●ブロークバック・マウンテン(オペラ)
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結構前に企画され、上演され、DVD化も
された、と耳にしていたこのオペラが
たまたま4日間だけ上演していることを知り、
オフの1本を蹴って、こちらを選んだ。
何と言っても、かなり思い入れがある作品だから。

驚いたのは、ある意味ロマンチックな
このゲイ・ドラマを、残酷さや苦悩を表現するためか、
音楽的にはひたすら前衛的というか、
耳に残る旋律がなく、メロディアスなモノを
期待する人たちにとっては、苦痛かもしれない。

作曲家ウオリネンの想像した世界は、
ただただ、不快な音の連続に聴こえるかもしれないし、
アリアがアリアとしても聴こえてこない。

音楽性の好みは分かれるとして、問題はドラマ。
映画とほぼ同じながら(それなりに濃厚なラブシーンもあり)、
やはりオペラとなると、きめ細やかな感情的な部分が
どうしても欠けてしまう。
それは歌で表現する、ということなのだろう。

公演日数が少ないせいもあり、リンカーン・センターの中でも
小さなホールのせいか、かないRシンプルなセット。
大道具の出し入れを移動させるスタッフたちが
芝居の途中でいちいち出入りするのが見え隠れするのは
ちょっと興覚めだったこういうことはNYでは珍しい。

ただ、このテーマをミュージカルとしてではなく、
オペラとして洗濯した朝鮮には頭が下がる。
そして、この難解な楽曲をこなしたすべてのキャストの
底力はすごい。
偶然にしても、この日程で観ることが出来たのは
ラッキーだと思う。



●Escape to Margalitaville
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これは、70、80年代にヒット曲を連発した
ジミー・バフェットの曲を元に、
作られたミュージカル。

マリオット・ホテルの中にある
大きなマーキース劇場で、
既にいつ終わるかも決まっている、ということで
特に期待していなかったけれど、
これがビックリ、楽しめた。

カリブ海の島に住む男たちと、寒い都会から
やってきた女性たちの恋愛を中心に、
火山の爆発や、プロペラ機での脱出などが
ドラマを面白くさせている。

ジャングルの中で、ドラッグの幻覚で見える
スーツ姿の男たちのタップから始まり、
空飛ぶプロメラ機の脇を雲になったダンサーたちは踊り、
スキューバダイビングする恋人同士の宙吊りなど
見どころも多く、お金もかかっている。

主演は去年、"Bright Star"に出ていた
ポール・アレクサンダー・ノーラン。
細身かと思って、いきなり脱いだら
マッチョで驚かされた。

何と言っても、演出が去年の"Come From Away"や
数年前の「メンフィス」でトニー賞作品賞をとっている
クリストファー・アシュレイだから、
そんな悪いワケはない。

それでも4ヶ月でクローズしてしまう、
というブロードウェイの厳しさ。
観ることが出来て良かった。



●ハリー・ポッターと呪いの子 パート1、パート2
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数年前にロンドンで始まった時のフィーバーぶりも
さることながら、ブロードウェイでも年末の発売同時の
チケット争奪戦は凄く、諦めていたけれど、
東京を出る直前にチケットを手に入れることが
出来たのはラッキーだった。

それにしても、パート1、パート2合わせて
6時間近く。途中2時間ほど休憩ということもあったけれど、
これがまったく長さを感じさせない。
それくらい面白く、良く出来ている。

かく言う僕は一応、原作、映画も観ていながらも、
ところどころ話を忘れているし、主要人物や背景も
?的なところはあるけれど、とにかくファン垂涎の
舞台になっていることは間違いない。
キャラクター登場のたびに、客席は大盛り上がりだし、
こちらも心踊らされる。

5分に一度は舞台セットが変わり、
出てくる出てくる魔法の数々。
映画のCGが、まるでそのまま舞台に
乗り移っているようだ。炎も水もフライングも、
そこにいた、と思った人間がまったく違う衣装で
突然驚く場所から出て来たり、と
驚きの連続。まったく飽きさせない。

ここではかつて「スパイダーマン ザ・ミュージカル」を
やり、(失敗してしまったけれど)その時も
劇場全体を作り変えていたが、今回もそう。
ありとあらゆる部分にふんだんにお金がかかっている。

劇場を作る、というのはともかく、
ちょっと頑張れば、この作品は日本でも十分ドル箱になる
舞台になることは間違いはない。
とは言え、映画のキャラクターを
きちんと引き継いでいるということがビシビシと
伝わってくる舞台だけに、日本でのキャスティングは
かなり難しいかもしれない。

ひと言、言っておくと、決してアトラクション的要素だけが
凄いワケではなく、脚本も本当によく出来ていて、
今年のトニー賞のストレートプレイ部門を総なめしたのも
よくわかる。

劇場前には「秘密を守れ」という長いテープが貼られ、
同様のバッジも手渡されるという懲りようだ。

今回の主役とも言えるハリー・ポッターの息子、
アルバス・ポッターのサム・クレメット、
そして大人になったハリーを演じるジェイミー・パーカーは
ロンドンからそのままのキャスト。
映画じゃエマ・ワトソンが演じていた
ハーマイオニーは舞台では黒人女性が
演じているのも面白い。
演出は、何と日本にも来日した「Onece ワンス」の
オリジナル演出ジョン・ティファニー。

見事な1作だった。

(映像はなく、場面写真のみ)


●カルメン・ジョーンズ
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いつもなら、3本以上観ることになるオフ・ブロードウェイだが、
結局、今回、観ることが出来たのは
今回はこれとあと1本("Beast in the Jungle")だけ
ということになった。
(『回転木馬』『マイ・フェア・レディ』を
二度ずつ観たため。笑)
オリジナルは、元々、オペラ「カルメン」を戦時中の
アメリカに置き換えたヴァージョンのリバイバル。
出演者は全員黒人キャストでも上演というのは
なんと75年ぶりらしい。

演出が、昨今のソンドハイム作品で
キャスト全員に楽器を演奏させたり、
「カラー・パープル」のリバイバルで注目を浴びた
ジョン・ドイルだから、期待は膨らんでいた。

舞台を四方から囲むように配された客席は、
ロンドンにあるチョコレート・ファクトリーに近い。
セットはシンプルだが、キャストが大道具、小道具を
動かしていくのだが、
ドイルの演出は、とにかく出演者を動かし続けること。
縦横無尽の動くキャストの計算され尽くした演出はさすがだ。
一人立って朗々と歌うシーンは、1曲あるかないか、だ。

主演のカルメンを演じるのは、"Caroline, or Change"で
トニー賞を受賞したアニタ・ノニ・ローズ。
10人すべてのキャストは素晴らしいが、
彼女は特に群を抜いている。
オフならではの狭いながらの
ダイナミックな演出が唸らせてくれた。


●迷子の警察音楽隊
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本年度のトニー賞ミュージカル作品賞、
演出賞、主演男優、主演女優と
メインどころを持っていったのがこの作品だ。
一昨年の冬、オフ・ブロードウェイで一度
観ているのだが、その時はまずまずかと思った。

今回、オンに上がったモノを観て、
キャストも演出もほぼ変わらないけれど、
これほど強く感情を揺さぶられるのは
何故だろう、と考えてみた。

これはそもそも日本でも公開された同名の映画が原案。
エジプトから派遣され、
間違えてイスラエルの片田舎の町に
辿り着いてしまった音楽隊。

カタコトの英語でしか言葉が通じない彼らが
そこで暮らす人々との一夜限りの話。
大きな事件は起きないが、そこで暮らす
市井の人々とのちょっとしたやり取りが、
観客の人生観を問いただしてくれる。

オフでは人の出入りと、装置の動きで見せていた
場面転換を、ここでは回転する盆の舞台を使って
それぞれの生活、生き方をまさに同時間的に
生かされている。

そして何度も聴いた郷愁感溢れる
デヴィッド・ヤズベク(『フル・モンティ』や
『神経衰弱ぎりぎりの女たち』)の音楽。
ほぼ全編に渡り出演者でもある6人の音楽隊が
奏でる楽曲が心に染み渡る。

10部門もトニー賞をとるとは思わなかったけれど、
これからも口コミでどんどん広がっていくだろう。
素晴らしいことだと思う。



●マイ・フェア・レディ
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今回のブロードウェイ観劇で、
どうしても期待してしまうのが
このリバイバル版だった。
結果的に、あまりにも素晴らしく、
まずない事だけど、これまたオフ作品を棒にふって
これと「回転木馬」は、二度観る、ということにした。

このヴィヴィアン・バーモントという劇場は
最も好きなシアター。円形の客席が囲む舞台は
今まで「ウォー・ホース」や前の「回転木馬」
「(四季)」なども楽しんだし、
何よりも、「南太平洋」、渡辺謙の「王様と私」に
引き続いて、バートレット・シャー演出に寄るモノだ。

オープニング、コヴェントガーデンで花を売る
イライザとヒギンズ教授の出会いのシーンが終わると、
背景のカーテンが上がっていき、遥か向こうと
思われる奥行きがあるステージからグーンと
せり出してくるヒギンズ邸は鳥肌モノだ。

メインのヒギンズ家の書斎は、特にモダンな
作りにはなっていないモノの、重厚感溢れる作りで
この書斎がゆっくりと回ると、研究室、バスルーム、
玄関と360度見せながら、キャストの扉の開閉によって
出入りを見せる見事さ。

主演のイライザをやっているローレン・アンブローズは
かつてテレビドラマ「シックス・フィート・アンダー」で
地味な長女の役をやっていたが、
とりたてて美人でもない。
でも、今回のイライザはそこが魅力。
どこにでもいる姉ちゃん、というこの雰囲気が
強い知性とプライドを持ち始めると
容姿以上に輝き出すのだ。
歌はもちろん申し分ない。

ヒギンズ教授は「ダウントン・アビー」の後半に出演していた
ハリー・H・ペイトン。彼もまさかの好演で
あの語るような歌を完璧にやってのける。
道化役のイライザの父ドリトル(ノルベルト・レオ・バッツ)は
イライザの落ち着いたシーンとは対照的に
楽しくダンスを取り入れて、見事な芝居を見せてくれた。

この3人の演技は、今年のトニー賞でも
披露されたので、あらゆるところで
目に出来ると思うので、是非とも観てほしい。

そして豪華なセットと共に、見ものはやっぱり衣装だ。
特に第一部後半、アスコット競馬場で
紳士淑女がずらりと並ぶシーンはため息が出る。
映画版を元にしがちなイライザの衣装も
ここでは違い、華美にならず、上品なデザインだ。
原作、映画とは違うラストシーンには驚かされたが、
これも文句なし。
二度観ながら、ところどころで新たな発見もあり、
大満足な作品だった。



●Broadway Bares 2018 Game Night
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毎年夏に行われるブロードウェイ・ダンサー
何百人が集い、ストリップを披露する
”Broadway Bares"も今年も観ることが出来た。

今年は"Game Night"と名うって、
ビデオやら、アーケードゲーム、
ボードゲームなどをイメージしたダンスと
ストリップが繰り広げられた。

何年も通っていると、
なかなかマンネリも感じるけれど、
今回はこのあと観ることになっていた
「真夜中のパーティ」のキャストの面々が登場。
カウボーイ役のチャーリー・カーヴァーが
全裸になるというサプライズがあって、
これは楽しめた。


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posted by みつあき at 14:10| Comment(0) | 演劇 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年04月27日

日本版メリー・ポピンズ

半年ほど前、店に来てくれた26歳のヨシ君から
日本で上演するミュージカル「メリー・ポピンズ」に
出演する、ということを聞いた。

こういう仕事をしていると、
出演者のみならず、
芸能関係者の方などが
店に来てくれるけれど、
多くの人は、自分がゲイであることは
当然のように隠している。

中には目と目が合って、
「あ、貴方もそうだったのですか」
と挨拶される人もいるけれど、
すぐに帰られる人もいれば、
ずっと意識しながらも、

結局言葉を交わさないという人もいる。
友人、知人はともかく、
職場の人には伝えたくない人は多い。
増して、舞台に立ったりする人はなおさら。

そんな中で、ヨシ君はゲイであることを
オープンにしているようだ。
時代は変わった、と言うか、
人の目に触れることも多い
その仕事で、大したモノだなあ、そう思う。


さて、「メリー・ポピンズ」。
このミュージカルへの僕の思い入れに関しては、
また書くことにして、今回の日本版は
本当に素晴らしく、かつて国内で観た
ミュージカルの中で、
1、2を争う出来だと言っても良く、
本当に素晴らしい出来だった。

比較的簡素だと言われるツアー版と聞いていたけれど、
僕が観たブロードウェイ版と、
ほぼ変わらないとも思うほどの作り。
演出、美術セット、ライティング、振り付け、
もちろん出演者、ヨシ君も含めたアンサンブル、
それぞれ、文句を付ける部分が
まったくないほど完成されている。

特に日本での上演で、ここまでお金が
かかっていると思えるモノも少なくない。
東京公演は5月7日まで。来月は大阪公演もある。
興味がある人は、騙されたと思って、是非とも。

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posted by みつあき at 19:42| Comment(0) | 演劇 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年04月05日

テイク・ミー・アウト2018

つい最近も書いたけれど、
この冬から春、初夏にかけて
多くのゲイ映画が公開されている。
それを思うと、ゲイ絡みの舞台、
というのはどれくらい
あったりするんだろうか。

ニューヨークで上演するモノは、
かなりマメにチェックしているけれど、
日本の舞台は、それほどでもなかったりする。

日本の舞台だって、(ゲイモノに限らず)
魅力的な作品も
決して少なくないんだが、
歌舞伎やオペラなどを除けば、
8割という女性客で埋め尽くされている
劇場に行くのがちょっと気が重くなってしまう。

ブロードウェイでもウエストエンドでは
その半分か、それ以上が男性客だったりするのに
なぜ、日本ってここまで男が少ないのだろう。


さて、そんな中、一昨年
観ようと思っていたゲイの野球選手を
モチーフにした芝居
「テイク・ミー・アウト」が再演されている
というので観に行ってきた。

stage_73369.jpg

これは、15年前ブロードウェイに
行った時に上演されていて、
2003年、トニー賞作品賞をとり、
全裸の男たちがシャワーを浴びるシーンが
話題となった一作だった。


舞台は、アメリカ大リーグの大スターが
記者会見で、ゲイであることをカミングアウトして
業界だけでなく、チームの中を震撼とさせるという話。
それも、彼は半分黒人の血が流れている、という
マイノリティの中のマイノリティなのだ。

それでも才能と努力もあって、トップに君臨した
彼の自尊心、それへの嫉妬、羨望、
そして差別などが入り混じっている
非常に興味深く、面白い作品になっている。

このチームの中で巻き起こる
さまざまな感情のぶつかり合いを
ロッカーとおぼしきセットを役者が
大きく移動させるのも、
決して雑になっていなくてスタイリッシュ。

着替えのシーンもとても多いけれど、
その間に芝居はどんどん進行するので気にならない。

役者もおおむね、素晴らしい。

ただ、ブロードウェイでは大きく注目を浴びた
シャワーシーン。
日本では、さすがに全裸はないかなと思っていたが、
まさかのバスタオルを腰に巻いて
(それもゴムバンドが入っている!)
その下に下着さえ付けている。

照明は落とされ、ブルーライトに
身体を浮かび上がらせながら、本水を使ってまで
見せていくだけに、これはない。

事務所の問題など色々あるのかも知れないけれど、
女優じゃあるまいし、
今どき、お尻くらい見せても
何ら問題はないだろう。

あまり本筋とは関係ないけれど、
ゲイとしても(たぶんファンの女性たちも)
がっかりしてしまうことは間違いない。

ただし、ゲイをモチーフにした脚本は
かなり面白かった。

5月1日まで上演中。

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posted by みつあき at 11:33| Comment(0) | 演劇 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする