当時30前だったヤモチ君が来てくれた。
当時は結構細身で髪の毛も少し長めだったのが、
なんと身体が凄く大きくなって、髪も短い。
最初、まったくわからなかったほどだ。
ヤモチ君は、都内から地方都市に転勤で
7年前に移動して、そのまま別の会社に
転職したらしい。
丁度その頃、身体を鍛えようと思って
彼の住むそばに偶然見つけたボディビルジムに
入ることにしたと言う。
もっとカジュアルなジムに、と思ったけれど、
場所が遠いのと、どうせやるならと
そこを選んだらしい。
そこで彼に付いてくれたのが、ヤモチ君より
8歳くらい年上のボディビルダー。
地方大会でかなり上位に入っている選手だったらしく、
ちょっと引き気味だったヤモチ君だったけれど、
ジムには人も少なく、きちんと初歩から教えてもらい、
それからぐんと伸びたのだそうだった。
なんとうちの店に来た頃よりも
20キロも増えたのだと言う。
ジムに入って5何ほど経ち、トレーナーの
大会の祝賀会があった帰り道に
他で二人で飲もうと言われ、
飲みに行ったら、そのあと田んぼの畦道の
中でキスをされたのだそうだ。
結婚もしてるから、まさかと思ったけれど
「すまん。酔っているから。
でも、入った時から可愛いと思ってた」と。
ヤモチ君のそれからの日々は、
彼のことでいっぱいになった。
でも深入りすると、自分が傷つくことは
目に見えている。
とは言え、週5回のトレーニングは
楽しみだけど、あのあと彼は普通に
振る舞っているらしい。
彼はゲイなのか、バイなのかわからない。
「頑張ってお前も大会に出ろよ」
そんな言葉を言ってくれるたびに、
『出たら、抱いてもらえますか?!
そんな言葉をグッと殺して
トレーニングに励む日々だそうだ。
少し虚しいけれど、ゲイ小説のような
流れに、少しクラクラさせられた。
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