HIV感染、余命30日と告知され、
メキシコまで治療薬を求める映画
「ダラス・バイヤーズクラブ」で有名な
ジャン=マルク・ヴァレ監督。
彼は去年の年末、ケベックの山小屋で
不審死を遂げたというけれど、
彼の初期の作品で大きな評価を
与えられていた「C.R.A.Z.Y.」が
やっと日本でも公開されている。
時代は1960年代から70年代のカナダ。
生まれたばかりのザックは、
父親から息子の一人に
抱かれようとした瞬間、
病院の床に落とされてしまう。
彼はそこから数奇な運命を辿っていく。
ザックの家族は、心配性の母親と、
クールでかっこいいブルーカラーの父親、
そしてザックも含めて、
男ばかり5人の子供たち。
勉強ばかりしている兄、
運動ばかりしている兄、
かなりぶっとんでいるはぐれ者の兄、
そして両親から愛されている弟。
そんなガチャガチャとした中で
敬虔なクリスチャンの父親は、
パッツィー・クラインや流行歌の大ファンだが、
軍の施設で働いている。
サングラスが似合い、常に車を洗う
父親をかっこいいと思っていた
ザックだが、幼少の頃からなんとなく
自分がゲイではないかと気付く。
しかし、父親の「男は男らしくしろ」
という言葉に翻弄され、悩んだあげく青年期を迎える。
このあたりは、僕自身の父親が
同じくクリスチャンでオペラや映画を愛し、
それでも僕に「男というモノは」と
説いていた幼少時の時を思い出し、
胸が痛くなった。
自分自身を受け入れられないザックと、
さらに受け入れようとしない家族。
その葛藤の末、ザックはどういう道を
歩いていくのか。
時にはスタイリッシュな映像処理や、
高揚させてくれるほど次々と流れる音楽
(これがまさに僕の高校、大学時代に流行ったモノ)
そしてペーソスに溢れた脚本が素晴らしい。
多くのゲイを扱った映画でも、かなり一級品かと
思われるこの映画が、17年近く
日本で公開されなかったのが不思議だ。
時間があれば、是非とも。
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