「アバクロ」と言えば、うちの店を
オープンした頃、多くの人たちが
こぞって着ていた。
特に筋肉質からガチムチのゲイには人気らしく、
まだ日本には店舗がなかったから、
みんな通販で購買していた時代だ。
ハワイのショッピングセンターにある
アバクロでは、ものすごい列を成して、
アジア人の若者たちも並んでいた、と聞いた。
特にブルース・ウェーバーが撮影した
男性ヌードの大きな紙袋は、
そこここでよく目にした。
そういう僕も友人からプレゼントで
いただいたり、自分で買ったりもしたものだ。
それから数年経ち、日本でも銀座に
アジア初のアバクロ店が出来、
あの独特の匂いは、四丁目の交差点でも
匂う、とみんなが言うほどだった。
しかしこの店が出来た頃からだろうか、
街でも店でもアバクロを着ている人を
少しずつ見かけなくなっていた。
JUN、VANというアイビーファッションから
ボートハウス、そしてPAPAS、POLO、
カルバンクライン、トミー・ヒルフィガー・・・
僕が若い頃からのゲイが好きな
ブランドの変遷、アバクロを
見なくなってしまったのも、そのひとつかと思っていた。
ただ、ちょうどその頃、CEOの
マイク・ジェフリーズが「黒い色の
洋服は売らないし、従業員にも着させない」とか
「太った人には着てほしくない」と
発言して、問題になり始めたことは
確かに記事などで目にしていた。
そんなアバクロの盛衰を描いた
「ホワイト・ホット」をNetflixが配信された。
この映画では、そのクローゼットなゲイだった
ジェフリーズの差別主義
(モデルや店員は、白人以外は使わない)や、
性的虐待(B.ウェーバーと共に、モデルに
次々と手をかけた)ということが暴かれていく。
噂には聞いていたけれど、これほど酷い
事実があったとは。
デザインも素敵で、縫製もしっかりしていただけに
今さらながら本当に残念。
現在のアバクロは2017年にCEOが変更されて、
差別もなく、大きなサイズのモノも
売り出し、変貌を遂げようとはしているようだけれど、
まだまだ尾は引いていくかもしれない。
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