Netflixで先週から配信された
台湾映画「君の心に刻んだ名前」
タイトルこそどこかで聞いたような題に
なっているが、80年代の台湾を舞台の
この映画を観た。
とは言え、この映画はゲイとして生まれた
青年の苦しみを描いてはいるものの、
青春映画としても非常に良く出来ている。
なおかつ、主演の二人が女性好みでもある。
そういう部分で、BL映画として
騒がれたりするのがちょっと悔しい(笑)
戦後、長く困難な時代を送っていた台湾の
やっと戒厳令が解除された1988年の
とある高校がこの映画の舞台。
そんな時代に、ブラスバンド部で
出会ったアハンとバーディ。
まだまだ厳しさが残る校内は、
やんちゃで、男女やゲイ差別も激しい。
バーディへ気持ちを抑えながら
ごくごく普通の高校生として生きようと
するアハン。
アハンの気持ちを知ってか知らずか、
あっけらかんとしながらも、
体制や押し付けがましい規律を
どんどん破っていこうとするバーディ。
次第に大きくなる心の奥底に眠る苦しさと闘い、
キリスト教徒の家庭で育つが故、
学校の神父に自分の気持ちをぶつけるアハン。
「(ゲイである自分など)地獄に堕としてくれ。
地獄で同じ趣味を持つ人たちと出会う!」
と怒りに満ちた祈りを捧げる。
それでも、二人の友情と恋愛が交差する日々は
若さゆえの楽しさと切なさが溢れ出る。
この二人が、政治家の蒋経国の葬儀に
行くシーンがある。
その町の中で、一人の女装した男が、
同性愛者の権利を訴えている。
風紀を乱す、と連行されていく彼。
その瞬間のアハン、バーディの二人の言動は
それぞれのキャラクターを強く表現している
象徴的なシーンになっている。
確かに主演の二人は、女のコが
黄色い声をあげるタイプだろうし、
恋愛の切なさを描いているという意味では
BLファンの気持ちをアゲるのかも知れない。
ただ、主人公たちとほぼ同時代を生きた
リウ・クァンフイ監督がゲイであることを
カミングアウトし、当時、どれほど
台湾の同性愛者は差別され、
不穏でもあり、無常でもあったことを
この映画で描きたかったのだと思うと
単にかっこいい男のコが恋愛をする、
というBLの枠だけに当て嵌めてはいけない。
そう思う。
ラスト、30年後が描かれ、
そして素晴らしいクレジットとなるが、
Netflixはここを飛ばしてしまう処理となるので
ご覧になる方は、是非とも飛ばさず、
しっかりとエンドタイトルまで
観てもらいたい。
コロナでボロボロになり、疲れ切った
コロナでボロボロになり、疲れ切った
2020年の年の瀬にこの映画に出会えたことを
心から喜びたい、そう思う。
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