ヨウジ君、28歳はデザインの会社に勤めて4年。
それほど大きな会社じゃないので、
スタッフも特に増えも減りもせず、
8人くらいの面々の中で
黙々と仕事をしている日々だ。
それくらい小さな会社だから
カミングアウトしよう、しようと
思いながらも、まだ出来ていないのだと言う。
仕事柄、そういう事には
比較的寛容な社長や社員だと思っている。
そんな矢先、花見をみんなですることになり、
会社の近くの公園で、夕方から夜まで
酒を飲んだ。
あまり強くないヨウジ君は、
女性の先輩だとか社長とかに
かなり飲まされて、ちょっとヘロヘロだった。
みんなで飲んでいる場所から
少し離れたところに公衆トイレがあり、
そこに行こうとすると、
7歳ほど上の先輩(男性)が
一緒に行こうと言う。
くだらない話をしながら、トイレに行き、
用を足して、戻ろうとしたその時に、
その先輩がいきなりキスをしてきた。
舌こそ入れられなかったけれど、
濃いヒゲがヨウジ君の頬にあたり、
それは、それは衝撃的だったと言う。

先輩は今は別れたとは言っていたが
つい去年まで彼女がいて、職場にも
連れてきたことがあった。
確かにヒゲ面だけど端正な顔立ちで
ヨウジ自身、入社した頃、
かっこいいと思ったことはあったけれど、
また、何故。
唇を奪われたあと、
「え!先輩。ゲイなんすか?」と聞くと
「わからない」そう言う。
「酔っ払ってるからですか?」
そう聞くと「うん、たぶんそうだと思う。すまん。」
と言う。
その日から、ヨウジ君は、その先輩と
どう関わればいいか、わからなかった。
先輩は自分のことをゲイだとわかっているのか。
それとも実は彼もなんだかんだ言って、ゲイなのか。
本当に酔っ払っていたからか。
まったくわかならいまま、
あれから3週間ほど
悶々とした日々が
過ぎようとしているようだ。
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