昨夜は僕と同世代の旧友の
ヤスダが来てくれた。
彼とは30代でお互いに
シビアな恋愛が終わり、
次に進まなければ、
という時に出会った友人だ。
この夏、彼のお姉さんが
癌で亡くなった。
もう数年前から具合が悪いことは
耳にしていた。
いつかはこの日が来る、
それはずっと聞いてはいたし、
ヤスダ自身も覚悟していたようだった。
そんな中、ヤスダのお母様は
もう80代をそろそろ
終えようとされていた。
数年前にご主人(ヤスダのお父さん)を亡くし、
辛い日を過ごされたあと、
少しずつ、記憶もまばらに
なって来た感じなのだと言う。
ヤスダは、他の兄弟と共に、
今回のお姉さんの逝去について
お母さんにどう伝えるかを
話し合った。
結果的に、ヤスダも含めて
家族は、お母さんにその事は一切伝えない、
そう決めたのだそうだ。
だから告別式にも
お母さんは出ることはなかった。
ただ、ヤスダは言う。
本当に、それで良かったのだろうか。
もし、お母さんの頭がしっかりとしていたら
「それだけは教えて欲しい」と
思うのではないか。
そういう気持ちの中で、
ヤスダは、真実だけど
言わなくても良いこともある。
それはヤスダにとって、
ゲイであることを親に伝える、
ということもそうだったと。
年老いた母親が、真実を知ることで
良いことがあるのか。
少しでも苦しませないような
配慮を、子供ならするべきではないか。
ヤスダは自分自身にそう言い聞かせながら、
納得していくしかないのだと呟いた。
ヤスダの気持ちは、痛いほど
よくわかった。
色々な意見はあるだろうけれど、
今回、僕もヤスダの家族が選んだ結論は
決して間違いではなかった、
そう思いたい。
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