セイジロウ君28歳の両親は
関西に住む55歳になる
お父さんと、53歳のお母さん。
一人っ子だったせいなのか、
二人からは、とても
愛されて育ったと言う。
子供の頃からいい子でいよう、
としていたせいなのか
怒られた記憶が本当にないようだ。
そんなセイジロウ君が
自分がゲイだと
気がついたのは、
小学校低学年の頃。
キャンプに行った時に、
同級生のかっこいい男の子が
上半身を脱いで、
川に入っているのを見て
ドキドキし、その日から
そのコのことがどんどん好きに
なってしまったのだと言う。
それから中学、高校に進み、
そういう気持ちは
確信から自信へと変化したと言う。
世の中で、ニュースなどでは
同性愛を扱うことも増え、
大学に進んだ頃に、2丁目にも来だした。
出会い系アプリで、
初体験も済ませた。
そして人と付き合う幸せも学んだ。
両親とは帰省するたびに、
色々なことについて
話すことは多かった。
それも自分の立場に立って
色々と教えてくれてきた父親とは
二十歳を超えてから
よく酒も飲んだらしい。
しかし、愛し愛されている両親に
カミングアウトするということは
さすがに考えられなかった。
彼らを傷つけたくない、
誤解を受けたくない、
というのが一番の理由だったらしい。
2年前のある日、
父親が上京し、話があるから
一緒に飲もうと
居酒屋に誘われた。
セイジロウ君は、ひょっとして
自分のことを聞かれるのじゃないか、
かなり緊張したのだと言う。
父親は自分の顔を見ながら、
「真剣なことだから、
しっかりと答えてほしい」
そう切り出された。
「え?何のこと?」と尋ねてみた。
「俺は同性愛者だということだ」
セイジロウ君は自分の耳を疑った。
「お前が同性愛者ということだ」と
言っているのかとさえ思った。
しかし、それは違い、父親は結婚前から
ずっと悩み苦しみ、セイジロウ君が
10歳くらいになった18年ほど前に
母親にちょっとしたことからバレてしまったと。
離婚の話にもなったけれど、
お前が成人するまでは
ということに落ち着いた。
しかし、その後、時間をかけて、
やはり離婚するのは正しいことではない、
そう両親は結論づけたらしい。
「お前はどう思うか。
正直に答えてほしい。」
そう言われて、セイジロウ君は
凍りついた。
正直、驚きを通り過ぎ、
ショックで長い時間、言葉が出せずに
その間、お父さんは黙って下を向いていたそうだ。
そして、やっと振り絞って出した言葉は
「これからも、お母さんを
傷つけないでほしい。」
それだけだったらしい。
お父さんは涙をためて
ゆっくりと頷いていたそうだ。
どういうふうにお母さんに
バレてしまったのか、
今、お父さんには恋人がいるのか、
お母さんは実はどう思っているのか、
そして何よりも、
本当に自分(セイジロウ君のこと)は
ゲイだとわかっていないのか。
そんなことをたくさん考えながらも、
ひと言も聞くことも、
カミングアウトもとても出来なかった。
それから2年。
二人はそのことについて、
まったく触れずにいるらしい。
父が満身の力を振り絞って
自分の告白したのに、
セイジロウ君は、
どうしても言えない自分を
責めたりもしたようだ。
初めて耳にした凄い話だった。
お互い様だから、
カミングアウトしてみれば?
などと、とても軽くは言えない。
などと、とても軽くは言えない。
それほど、デリケートな話だとも思った。
この話を聞いて、思い出したのは
Fun Homeという漫画が原作のミュージカル。
レズビアンの娘とゲイの父親の
確執と愛情を描いたモノだった。
日本で発売されている漫画も必読。
写真は舞台"FUN HOME"
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