土曜日に人に紹介されて、
初めて来てくれたと言うノリヤ君、29歳。
遅い時間だったので、
色々話を聞くと、今、自分は
人生の大きな岐路に立っているのだと言う。
彼は高校時代、かなり一生懸命勉強に励み、
某有名大学に入学した。
そして、結構大きな会社に入ることも出来た。
会社に入って7年。
仕事はこれと言って自分を昂めることはなく、
やる気が起きずに、ただ、ただ
収入を得るためにやっている感じが続いている。
しかし、彼は昔から人の前で
パフォーマンスをしたい、
そう思っていた。
そんな理由もあって、ここ数ヶ月、週末だけ
養成所のようなところに通っている。
とは言っても、それは趣味のようなモノで
それで食べていこう、なんて思ってもいない。
養成所の中にいる学生たちは
自分よりも年上、年下に限らず
本気度が違う。
平日はガッツリとアルバイトをしながら、
必死になって、将来の自分の仕事に
繋げたい、そう思っている。
それに引き換え、自分はすべてが中途半端で
どうしようもない気がしてくる。
少なくとも、名門大学から一流企業に入り
それなりの収入があるということで
どこか安心してしまっている。
このまま定年まで、なんて絶対考えたくないし、
どこかでやりたい事はたくさんあるはずだ、と
思いながらも、その一歩が踏み出せない。
結果的に、何がしたいか定まらない、
勇気が持てない、
そしてその前に、すべての恵まれた条件を
捨てるのが怖い。
僕個人は、そこまでの
一流企業に勤めたことはないけれど、
やはり20代から30代にかけて、
バブルも含めてそこそこの収入があり、
ノリヤ君同様、動くことが出来なかった。
今、思えば、それはそれで意味があったとは
思うし、後悔することはないけれど、
あの時ああしていればどうだったんだろうか
もう少し広がりがあったのかも知れない、
そう思うこともある。
30歳なら30歳にしか出来ないこともある。
失敗しても、まだまだ先も長いし、
いくらでも冒険が出来る年齢なのだ。
ちょっとだけ頑張っても、
決して無駄にはならない、そう思う。
初めて会ったノリヤ君だったけれど、
応援したいなあ、そう思わせてくれる人だった。