僕がニューヨークに行くと、
必ず会う親友のミキオが
養子として育てている娘リリーを連れて
日本に帰国。日曜日に来てくれた。
うちの店に入る前に、
彼らをとりまく昔からの友人たち
8人が集い、みんなで食事をして、
そのあと、みんなで店に寄ってくれた。
食事会に参加できなかった4人は
店で待っており、いずれにしても
30年近く日本を離れているにも関わらず、
これだけみんなに愛されているミキオは
凄いなあと思った次第。
それでも来られなかった人たちも
まだまだいた。
1年半前の秋、ミキオが同性婚した
パートナーのジョンは
病気で倒れ、そのまま急死をしてしまった。
突然のミキオからの連絡で、
あまりに驚いたのを
まだ昨日のことのように覚えている。
つい前日まで、元気で
リリーを入りたての学校まで
送っていったり、迎えにいったり
してくれていたのがジョンだった。
そのひと月後、
ニューヨークで会ったミキオは
ただ、ただ泣くばかりだった。
その時に「何故、いつまでも泣いてるの」と
毅然としていたリリーは、今、9歳。
ミキオに聞くと、彼女が当時、「死」ということを
どう認識していたのかは、よくわからないと言う。
ただ、最近では「いつもダディの夢を見る。
だからずっと近くにいるから、安心」
リリーはそう言うのだそうだ。
社交的で明るいリリーは、
うちの店に来ても大人気で、
カウンターの中に入りたいと言い、
一瞬、お客さんたちのアイドルとなった。
僕と同世代のミキオがたった一人で
9歳の子を育てているのは
並大抵じゃない、そう思う。
娘のためなら命も投げ出す、
と言えるミキオを見て
自分の欲望だけに生きている自分が
少し劣等感にかられてしまう。
いずれにしても、
彼女が誰かと結婚するような日が来る時、
ニューヨークか、日本で
僕も参列出来ればなあ、そんなことを思った。
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