2018年06月04日

親友の死

今回の長旅で、フィラデルフィアに到着した
その空港で、携帯を開くと、
宮城に住む親友のヤスが亡くなった、と
彼女の友人ジャニスから連絡があった。

ヤスのことは、このブログでも何度か
書かせてもらった。



上を書いたあと、僕は数ヶ月に一度、
ヤスを見舞った。

去年の夏の暑い盛り、
自宅から、療養施設に移った時、
実はこの時が一番元気で、ほころぶような笑顔で
僕を迎え入れ、『ゲーム・オブ・スローンズ』などの
テレビドラマの話題まで盛り上がった。

僕がこの1年間の中で
最も彼が元気な顔を見せてくれた1日だった。

彼は懸命に食事療法でガンを克服しようとしていたし、
僕もそれを信じて、疑わなかった。

その後、ほぼ2日に一度、僕はヤスに電話をし、
失われた35年を取り戻すように
たくさんの話をした。

時には痛みや、精神的不安定から
落ち込んでいる様子もあったけれど、
それでもヤスは、ほぼいつも僕には
元気な声を聞かせてくれようとしていた。

しかし、去年の秋を迎えた頃、
彼は自宅で転倒、
前立腺癌が骨髄まで転移し、
足を切除しなければならなくなったと言う。

すぐに病院に駆けつけようとしたが、
ICUに入り、面会が出来ないということで
僕はヤスから連絡が来ることを待った。

結局、数日後、彼の妹さんから連絡があり、
出血多量で、もう余命いくばくもない、とのことだった。

すぐに仙台の病院に駆けつけると
ヤスは昏々と眠っているように見えたが、
どこかで意識があるかと思い、
僕は夢中で話し続けた。
もう長くないかも知れない。
もう、彼の意識は戻ることはないかも。
そんな事を考えながら、僕は東京に戻った。

しかし、彼の生命力は凄かった。
そこから彼の意識は戻り、
暮れに行った時には、
言葉さえ聞き辛かったが
「俺、わかるか?」と聞くと
大きく頷いた。

足は切除され、ずっとベッドに横たわったままの
ヤスの心情を思うと、僕はたまらなかった。

バイクに乗って、まだ10代だった僕の
ボロアパートに来てくれては
情熱的に音楽の話をしてくれたヤス。

いつもポジティブで、
笑顔で酒を楽しく飲んでいたヤス。

ある意味、ヤスは僕にとって
初恋の人だったのかも知れない。

二十歳前後のヤスの姿は
40年以上も経って、
こんな風になってしまったことが
僕には信じられなかったけれど、
それでも彼の瞳の中の輝きは
僕の心に何かを訴えてくれていた。


インフルエンザが流行り、
1月、2月と面会謝絶だったが、
それが解かれた3月に見舞った時も
ヤスは少しやつれた感じではあるものの、
しどろもどろな感じで
「元気か?俺は元気だよ」と
言葉になるか、ならない声を発してくれた。


そして5月。
連休明けた頃に、再度、妹さんから連絡があり、
もう長くはないだろうとドクターから
診断されたとのことを伝えられた。

旅行に出る一週間前、
これが最後だろうという思いを胸に
僕は再び仙台に向かった。

何とヤスは目を大きく見開いて
僕を迎え入れた。
もちろん、声も出せず、
もう前のような表情もなかった。

僕のことがわかるか、
どうかさえわからなかった。

病室には25歳になる彼の娘さんがいた。
二人の娘さんのうちの長女にあたる人だった。

僕が彼と初めて会った当時のヤスよりも
今の娘さんのほうが5つも年上だ。
そんな不思議な気持ちの中で
人間の生きていく時間と、
月日の流れる早さを思った。

娘さんに、僕とヤスが出会った頃の話を色々とすると
「とうちゃんにも、そんな時代があったんだ〜」と
娘さんはヤスの頭を撫でた。

「僕はあなたのとうちゃんのことが
心から大好きだったんですよ」
そんな事を心の中で思いながら、
僕はヤスの手を握り、
最後に彼の細くなった身体を抱きしめた。

あれから10日後、先月の29日の日に
ヤスは亡くなったようだった。

35年ぶりに自宅で会った時に
出会った彼の女友達のジャニスが
どうやって僕の連絡先を知ったか、
メールを送ってくれたのだった。

ヤスのFacebookを見ると、多くの彼の友達が
たくさんのコメントを書いていた。

そこには彼の素敵な生き方、
それに影響を受けた人たちのたくさんの思いなどが
ちりばめられていた。


2年前。
やっぱり僕の旅行中に、僕がゲイだと自覚をして
ほぼ初めて友人になったゲイの同い年の友人オオタが
癌で亡くなった。

オオタも、ヤスも
僕にとっては古い同世代の親友で、
その二人とも。葬儀には出ることが出来なかった。

大きな地球の上で、
それでも繋がっている空を見ながら
僕はヤスに心からありがとうと伝えた。

彼が与えてくれたような多くのことを
僕は誰かに与えることが出来ているんだろうか。

そんな事を考えながら、
もうしばらく旅を続けることにします。

留守で申し訳ありませんが、
毎日、素敵なスタッフが対応しているので、
よろしくお願いします。


posted by みつあき at 01:24| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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