2018年02月27日

初めての旅、初めての喧嘩

30代のヨウスケとタクオは、
付き合ってまだひと月。
ひと月の記念に、この冬、温泉旅行に、と
東北地方に向かったそうだ。

一歳年上のヨウスケが旅の手配をした。
初めての旅行だから、と
奮発してグリーン車、
そしてかなり良いホテルを
ダブルで予約をした。

前の日は二人で飲みたい、とタクオが
言うので、早くから動きたいヨウスケは
午後の比較的ゆっくりした新幹線だった。

電車の中でタクオが
「男二人でダブルとか大丈夫かなあ」と言うから
「大丈夫だよ。一流ホテルだもん。」
ヨウスケがそう言うと、タクオは
「チェックインする時に、
別々に入ればいいか。」
そんな事言い出す。
「別に悪い事している訳じゃないし、
堂々としていればいいじゃないか」と
タクオが言う。

それなりにオープンでいたいと思うタクオと
結構人目を気にするヨウスケの間で
旅の始まりからちょっとした不均衡が生まれる。

そうこうしているうちに、
どんどん雪が激しくなってきた。
そしてノロノロした運転が続き、
ついには途中駅で止まってしまう。

猛吹雪で線路のポイントが動かなくなったと
アナウンスがあった。
予定では6時には駅に着き、
そこからバスに乗り継ぐのだけれど、
それにはどうしても間に合いそうもない。

途中、ホテルに「遅れる」と電話をするが
どれだけ遅れるか、わからない。

結局、新幹線は1時間近く遅れ、バスには乗れず、
やっと乗ったタクシーも雪で
回り道をすることになったと言う。

結局、7時過ぎに着くはずのホテルには
11時過ぎに。

ひと気もないホテルのフロントで
結局、二人でチェックインすることになり、
タクオは何となく
一人のコンシェルジェが
にやりとした、と思ったようだ。

予約したレストランはクローズ。
雪のせいで、調理人も早く帰り、
ルームサービスもないと言う。

もちろん、近くにコンビニも
あるワケではなく、
ホテルにあった自動販売機で
酒のつまみのようなモノで
夜を過ごすことになる。

タクオさえ、前日に飲みに行こうと
言わなければ、早く出られたのに。
そう思う気持ちと、どうであれ、
無理に叩き起こしてでも、早い新幹線に
乗れば良かったなどと
ヨウスケに言ってしまう。

タクオはタクオで
わざわざダブルベッドを取り、
恥ずかしい思いをさせられたと怒る。

せっかく一緒に過ごしたい一夜が
散々なモノになりそうだった。


そんな中、0時過ぎに
ホテルのコンシェルジュの人から連絡があった。

「この大雪の中、お二人で素敵な時間を
過ごそうと思われたのに、
本当に何も出来なくて申し訳ございません。
フロントの人間で、今、作ったのですが」と
大皿にサンドイッチと、
赤のワインボトル1本を持って来てくれた。

きっと二人はカップルだとわかり、
気を利かせてくれたようだった。

頭を下げたボーイの人にお礼を言い、
彼が部屋を出たあと、タクオは
ヨウスケに抱きつき「ごめんね。
ビクビクした俺が悪かった。」
そう謝った。

ヨウスケも「俺こそ、イライラしてごめん。」
二人はしんしんと降り積もる外の雪を見ながら
ワインをゆっくりとたしなめ、
素敵な夜を迎えたそうだ。

やっとひと月、されどひと月。
きっと、良い始まりになったのだと思う。

posted by みつあき at 20:11| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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