それから3年。
この春、彼は職場に戻って来た。
それも見事に鍛えた肉体と、さらにさわやかな雰囲気を持って。
ひょっとしてゲイか?と思うほどの変化だったが
どうであれ、ヤマネ君の心に覆いかぶさる
彼の存在の大きさは、また日々を辛く、
重くさせていった。
この辺りまでは、なるほど、そんなこともあるなあ、
そう思うのだが、このあとの展開には
僕もこのブログが創作なのか?と
思われるほどの流れになり、
驚いてしまうことになる。
ヤマネ君は数年前、マンションを購入した。
都心でみんなが憧れるようなアーバンライフを
ヤマネ君はとても気にいっていた。
そんなある日、電車を降りて、
自宅への道をほろ酔い気分で歩いていると、
会社の彼が女性と歩いている。
!?
何故?こんな場所に!
ヤマネ君はドギマギしながら、
彼らを見過ごして、自分のマンションに
向かおうとしたのだが、自分の先を行くその二人は
なんと自分のマンションに入っていくのだ。
自分に気がつかず、マンションに入った二人は
エレベーターに乗った。
ヤマネ君は、エレベーターが動くのを待ち、
階数を確かめたら、何と彼のフロアに止まった。
10世帯ほどが住む彼のフロアだが、
それが、彼の住まいなのか、彼女の住まいなのか。
あまりの衝撃に、たじろぎながら、
ヤマネ君は時間を見てから
エレベーターに乗った。
フロアに降りると、そこに何故か
まだ部屋に入っていない二人の姿があった。
そしてバッチリと目が合ってしまう。
「あ・・・」と固まるヤマネ君だが
「え?ここに住んでるんすか?マジ???」
とほろ酔い気分の部下。
どこの部屋か、と話すと、何とヤマネ君のはす向かいの部屋だと言う。
「んじゃ、いつか屋上でビールでも一緒にしましょう」
爽やかにそう言う彼。
あまりの衝撃に、ヤマネ君はどうすれば良いか、
わからなくなったと言う。
それでなくとも、職場で会うだけでも苦痛だったのに、
まさかのまさか、住まいでも同じ場所だと。
彼自身も、何故かヤマネ君がよそよそしいいのは
十分に気がついているはず。
にもかかわらず、何故こんな対応ができるんだろう。
ヤマネ君は何人かの友人に相談する。
「すぐ、そのマンションを売るなりして、すぐ出るべき」
という意見を言ってくれたりするようだ。
でも、僕はこの話を聞いて、
何だか凄いお伽話を耳にした気持ちになって
とても幸せな思いをした。
だって、こんな偶然は、必然だろうか。
神が仕組んだとしか思えない。
僕はずっと辛い思いをしていたヤマネ君が
やっとの思いで、次のステップに上がるよう、
神が道筋をつけたように思えた。
ある意味、これはヤマネ君にとって
試練かも知れないけれど、
でも前向きに考えれば、
彼とのより良い関係を作ることが出来る、
ということだと思う。
これをきっかけに、肉体関係を結べる
ということはもちろんないだろうけれど、
少なくとも今までよりも、ずっとハッピーな
職場環境を持つこともできるだろうし、
彼とより良い関係が築き上げることが
出来るんじゃないかと思う。
意外な展開だったが、とても素敵な話を聞いた。
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