2016年12月20日

旅先での辛いできごと その1

この冬も、ちょっと長めの旅をさせてもらった。
いつもの事ながら、留守の店を守ってくれるスタッフ、
そして「いないの?」と言いながら、店で飲んでいただく
お客さんには心から感謝。

そして旅行中、約束された悲しい出来事と
予期していなかった辛い出来事がふたつあった。


今回の旅行は、いつものようにブロードウェイの新作を
観る、という目的は変わらなかったのだが、
それとは別に、今回、どうしても
行かなければならない理由があった。

ニューヨークでいつも世話になっている親友、
そのパートナーが先月急死し、
遺された友人と養子の一人娘の顔を見る、
というのが、ひとつの約束だった。


友人とはNYに到着してすぐに会いたかったのだが、
自身、やる事が山のようにあるらしく、
パートナーの葬儀に参列をする、
ということでその時に会うつもりでいた。

ところが、友人が送ってくれた住所に誤りがあり
(前日に確認をしたのだが、連絡が取れず)、
結局、僕が向かったブルックリンとはまったく真逆に場所で行われていた、
ということをあとで知った。
というわけで、葬儀の形ではパートナーにはお別れ出来ずにいた。

結局、友人とは、彼がひと月ぶりに仕事を始める、という
その前日の夜、彼らの自宅で会った。
もちろん、7歳の娘さんも一緒だった。
友人は、会ったその瞬間から、僕が帰るまで、
ほとんどずっと泣いていた。

彼のパートナーは、亡くなる一週間ほど前から
風邪のような症状だったそうだ。
ただ、その風邪がどれほど辛かったのかは、
本人が言わないタイプなので、友人はよくわからなかったと言う。

しかし、突然、自宅から娘を学校に迎えにも行けない、
というほど辛そうな連絡があり、
うちに帰ると顔色もひどい状態で、
本人が嫌がったけれど、その場で、救急車を呼んだそうだ。
ただ、そういう状態でも、
パートナーはきちんとした格好に着替え、
救急隊を待たせるほどだったらしい。

病院に行くと、かなりひどい肺炎を起こしている、と言われ、
すぐに処置が始まり、ずいぶん長い時間、パートナーは辛そうで、
まったく口も聞けない状態が続いたようだった。
ただ、その直後は顔色も良くなり、落ち着き、
友人とも娘さんとも話が出来たようだった。
思えば、それが最期の会話となったそうだ。

彼の身体は敗血症に侵され、医師からは
「かなり大変な状態だから、家族に伝えたほうが良い」と言われた。
一旦、娘さんを友人宅に預け、友人が自宅に戻ろうとした時に
「すぐに来てくれ」と病院から連絡が入ったのが、午後10時頃。

友人病室が戻った時は、彼はまったく反応をせず、
それからずっと手を握り、耳元で話しかけたりしていて、
約4時間後、翌午前2時35分に他界したようだった。

医者からは、もう少し早く病院に来ていれば、と聞かされ、
悔しくて、悔しくて仕方がなかった、友人はそう言った。


36年付き合った中で、一緒に暮らしたのがここ10年。
そのうちの8年は娘さんが来て、
生活に追われた日々だったようだった。

喧嘩もたくさんしたし、家のことや、彼女のことも任せっぱなしで、
いざパートナーが亡くなってしまったあと、どうやったらいいか、
よくこんな事やっていたなあ、と思うことばかりだったそうだ。

友人は運転しないのだが、
今後、娘さんを連れて3人で遠出をしよう、
とこの夏、新車を買ったばかりだったようだ。
そのうち、と言いながら、
結局、遠出も出来なかった、と友人は泣いた。

娘さんは、1日の生活のうち、
学校以外の8割は亡くなった彼と過ごしていたようだったが、
元来の強い性格からか、
まったく涙を見せることもなく、毅然としていて、
れが友人にはある意味、ホッとすることでもあったようだった。

友人が泣いていても「何故?そんなに泣くの?
泣いても何もいいことは起きない。幸せになれない。」
そう言っていたというから、彼女のその強さは
元々の親御さんのDNAだったのかもしれない、
そんな話をしていた。

ただ、僕が行った翌日、友人から改めてメールがあった。
娘さんは夜、寝ようとしない、宿題もしない、
夜中にお菓子を欲しがる、それについて友人が
「いい加減にしなさい。死んだダディも怒るよ」
そう怒鳴ると、彼女は初めて「ダディーは何故死んだの?」と
長い間、泣きじゃくったそうだった。

まだ8歳にもならない彼女が、精一杯頑張っていた糸が
ちょっと切れたようだった、と友人は話してくれた。
生命保険を嫌い、まったく賭けていなかったパートナー。
僕と同い歳の友人は、娘さんを大学に入れるまで
まだ10年以上の月日を一人で見ていかなければならない。
でも、頑張って前を向いて歩いていくしかない、と。

彼と別れ際、パートナーが毎日、
自分で言っていた言葉を紙に書いたモノを
彼は僕に渡してくれた。

“BE OUTSIDE THE BOX”

Do not Follow the Past.
Do not anticipate the future.
Remain in the present moment.
Leave your mind alone.
BE BE BE
posted by みつあき at 08:09| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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