2011年03月31日

震災地の友に

週末のロック、ポップ色とは違い、
平日の店内は大体、ジャズ・ボーカルを
流していることが多いけれど、
今日はシュウジが持って来てくれた
Gleeの最新曲などを流していた。
そんな中にRod Stewartの曲があった。

僕がRod Stewartを知ったのは、19歳の頃。
当時、大学に通いながら、
アルバイトしていた喫茶店で知り合った
2歳上のヤスという友人のうちで
"Atlantic Crossing"というアルバムを
聴かせてもらったのが最初だった。

出会った最初の日、バイトが終わって
「夕べ、カレー作り過ぎたから食べに来ないか?」
そういうヤスは、写真系の専門学校に通い、ドラムを叩き、
ロックと酒をこよなく愛する素敵な奴だった。

ゲイだという自覚がなかった僕には
ただ憧れのあんちゃんという感じだったけれど、
それから毎日、ヤスの部屋で、
安い酒(当時はサントリー・レッド)を飲みながら、
朝までターンテーブルに
色々なレコードを載せて聴かせてくれた。

まだまだフォークソングや、
せいぜいビートルズくらいしか聴いていなかった
僕にとって、彼は救世主のようだった。

エリック・クラプトン、イーグルス、
プロコルハルム、エルトン・ジョン、
ジョニー・ウィンター、ジェフ・ベック、デイヴ・メイソン、
そしてロッド・スチュアート。

「なんで、俺たち、こんなに会ってんだろ。」
ヤスは笑っていたが、今、思えば、僕のほうに、
ほのかな恋愛感情があったんだろう。
ソファで寝ているヤスの顔をぼんやりと眺めながら
当時の僕は一人で、酒を呑むことしか出来なかった。

その後、数ヶ月して、
アルバイトを辞めた彼だったが、
久しぶりに再会した彼の横には、
ヤスよりも幾つか上の女性の姿があった。
「いいなあ、彼女が出来たんだ。」そう言いながら、
僕が寂しく思ったのは言うまでもない。

その後、ヤスは家業のカメラ店を継ぐために、
宮城に帰ってしまった。


それから数年後、僕にも彼女が出来、
一度二人で彼の実家がある宮城に行ったことがある。
彼の車で、今回、凄い被害にあった
松島まですぐだったことをよく覚えている。

もう宮城に帰る、というヤスと一緒に
呑んだことがあった。
その時、何を話したかは覚えていない。

それから幾年月。

今回の震災で、僕は久しぶりに彼のことを思い出し、
インターネットでたぶん彼の自宅であろう
カメラ店を探しあて、
震災の日から何度も電話をした。
しかし、まったく繋がりもせず、
その地域がどういう状態かも、
インターネットで知ることも出来なかった。

しかし、昨日の夕方、電話は繋がった。
ヤス自身が出た。
僕が名字を言ったら、
最初は「え?」と間があいたが、
フルネームで僕の名前を呼び、
「よく、電話してくれたなあ!!」と大声をあげた。

彼は離婚後、娘を一人で育てあげ、
その娘は今年、自宅を離れて、
両親が亡くなってから
ヤスはひとり暮らしで、
カメラ店を切り盛りしていたらしい。
そして、今回の震災で
多くの友人や、親戚は津波で亡くなったと言う。

彼の家も大変な状態で、
仕事の機材はすべてダメになったようだ。
「もう、廃業だよ。」とヤスは言った。

「でも、見てろ。俺には好きな音楽がある。
残りの人生、好きなことで生きていくよ。」
そう言った。
その瞬間、
僕の頭の中で、Rod Stewartの"Sailing"が流れた。

僕がヤスから教わったロック・ミュージック。
僕はその音楽の先に、いつも弱い者の叫び、
あらゆる制圧からの脅威、
そしてそれに屈せぬ思いも学びとったはずだった。

想像だにしなかった今回の震災。そして原発の事故。

バーをやっていることも、僕がゲイであることも
昨日の電話では、僕はヤスに、まだ言うことが出来なかった。

「俺、何とかしてそっちに行くよ。」と僕が言うと
「俺が行く。一緒に呑もう。」
ヤスの声は少し震えているように思えた。

大変だった3月も今日で終わりだ。
春の訪れと友に、ヤスとうまい酒が呑めそうだ。
すっかりおっさんに成り果てて、
こんな奴に恋をしていたんだ、
とがっかりさせられるためにも、
一刻も早くヤスに会いたい。

そして一刻も早く、
みんなが安らぐことが出来る国へと
復興することが出来ればいいのだけれど。

posted by みつあき at 05:24| Comment(2) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
きっかけが震災という悲劇であれ、このような「再会」は嬉しいね。読んでいて、涙がこぼれました。。。

幾多の震災被害者のストーリーが聞こえてくる昨今、やはり自身の身近にいるみつあき兄貴の肉声に近いお話は、胸に染み込んできました。

この再会は決して「偶然」ではなく、お互いが「求めた」必然と思います。

思い切り旧交を温めて、先輩の新しい門出を安いお酒でお祝いしてくださいね!!(笑)
Posted by 慎一郎 at 2011年03月31日 11:02
>慎一郎
いつも、ありがとう。
あまりに嬉しくて、いつもならあまり書かない店とは関係ない個人的日記になってしまった。
こんな酷い出来事は決してあってはならなかったけれど、彼と再会出来ると思うと、やはり人生の中で必然はあるのかも知れない。
もちろん、それは絶対に「天罰」であるはずはないんだけれど。
Posted by みつあき at 2011年03月31日 13:46
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