昨夜、初めて来てくれたお客さん二人は、僕よりも少しだけ年下。
色々話していたら、15年ほど前までは、
よくこの2丁目で飲んでいたらしいけれど、
ここのところ、すっかりご無沙汰。
縁遠くなった理由は、時代もお店も変わってしまったからだと言う。
何よりも大きい理由は、2丁目の兄貴的存在
一(はじめ)さんが亡くなってしまったことだったらしい。
一さんは、若かった僕にとっても、
本当に兄貴的存在だったし、本当にお世話になった。
彼を最初に見たのは、彼が九州男(2丁目の老舗)のスタッフだった時。
その後、男蔵(めんくら)、男’s(おっす)、V-Rock、龍、と
次々に多くのお店のマスターとして君臨した。
それぞれの店の名前から、野郎系、というイメージが強く、
チャーミングでハンサムなルックスに加えて、
当時はまわりにまったくいないほど、マッチョな体格だった。
歌舞伎やオペラなど芸術の知識にも長けていて
そのギャップが多くの人の憧れの気持ちを強くした。
九州から出て来た頃は、まったくゲイに興味がないノンケで、
工事現場で働いているところ、九州男のまっちゃん(マスター)に
声をかけられた、と聞いた。
その後、彼は九州男を手伝うようになる。
芸術のげの字も知らなかった彼を、そういう方向に引っ張ったのは
まっちゃんと、多くのお店のお客さんだったと言う。
その後、僕は国立競技場で一緒にトレーニングをしたり、
厨子マリーナのユーミンのライブに一緒に行ったりさせてもらった。
一さんは、誰に対しても、平等で、笑顔を絶やさず
接することを忘れなかった。
彼が亡くなって、もう13年もの月日が流れた。
僕はとっくに彼の年齢を過ぎてしまった。
僕が知る限り、新宿2丁目には、
彼のようなタイプのマスターはもういない。
もちろん、僕が彼のようになる術もない。
しかし、何らかの形で、彼のハートを
受け継いで行くことが出来れば。
そんな事をふと考えた金曜日の夜の営業だった。
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