父と息子

先週の週末、腕時計の忘れ物があった。

見てみると、国産だけど、

かなりの値段のモノ。

３日後、常連客のケイジちゃんから

「時計、忘れてなかった？」と電話。

良かった、良かった。

で、昨日、取りに来てくれた彼に、

あんな高価なモノを簡単にはずして

カウンターなどに置いちゃ、

ダメだよ、と言うと、

「いや、高価だからじゃなくって、

あれは40年以上前に父が買ったもので、

彼からもらったものなんだ。」と言った。

腕時計をしない僕は、

肌身離さずお父さんからの贈り物を

身に着けている、という感覚は

よくわからないけれど、

それを聞いただけで、彼の

父親に対する思いを強く感じた。

店には、父親とうまく行かないと

嘆くお客さんも少なくない。

どちらかと言うと、すごく仲が良い

親子というほうが珍しいのかも知れない。

子供にとって、父親は、

無償の愛で守ろうとする母親とは、

また少し違うのだろう。

そんななかなか難しい

男同士の親子関係が多い中、

ケイジちゃんの腕時計を握る手が、

優しく、暖かく感じた。

皆さん、忘れ物には注意してくださいね。

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