キヨシ君は10歳年下の大好きだった彼に
3ヶ月くらいでふられたのだと言う。
何がダメだったのか、と尋ねると
付き合っている中で、キヨシ君自身
会っている時もそうだし、LINE上でも
「好きだ」とか「愛している」と
いう言葉を言わなかったからだと言う。
特に、「そう言ってくれ」と言われて
「嫌だ」と言ったことはない。
ただ、「何故、いつも言ってくれないのか」と
聞かれた時に「小っ恥ずかしいからだ」と
言ったのが、ダメだったらしい。
キヨシ君の横にいたマサオは、
20代の頃から何人か外国人と
付き合っていたことがあった。
そのせいか、"love you"というのは
日常茶飯事だった。
だから、今付き合っている日本人の彼にも
マサオはしょっちゅう「好きだよ」と
連発するけれど、やっぱり相手は
それほど言ってはくれない、そう言う。
言葉とはちょっと違うけれど
僕の母が生きていた頃に、月に4日ほど
母が入居していた介護施設を
訪ねて行っていた時期があった。
僕が東京に帰る時に、寂しそうにする
母親に「また来月来るよ」と
ハグをしたら、介護の人たちに
「そうやっている息子さんを
見るのは初めて」と言われた。
僕も母が弱くなる前まで、そんなことを
したことはなかったけれど、
小学生の頃まで父や母が
よく抱きしめてくれていたことを
思い出したからだった。
身体に触れることや、好きである、と
表現することを、多くの日本人は
恥ずかしいと思う。
僕の中にも、それはあるけれど、
そうやって表現することは決して
悪くはない、そう思う。
もちろん、だからと言って、それが
別れの理由というのも、
少し寂しい気はするけれど。