常連の一人のケイジロウは、
テレワークが長くなり、
結婚していることもあり、
なかなかうちを空けることが
少なくなったと言う。
うちの店の既婚者の人は
今までそれなりの人数にいたけれど、
コロナ前も、それぞれが家庭の事情で
頻繁には店には来られない人も多い。
ただ、コロナ前、ケイジロウは比較的
仕事終わりが遅いこともあって、本当に
よく来てくれていた。
ただ、既婚者だと知ったのは、
彼が店に来出して、ずいぶん経ってから。
どこのバーに行っても、何となく
異人種で肩身の狭い思いをしていたのだと言う。
そしてここひと月ほどか、
よく来てくれるようになったネモトちゃん。
彼も既婚者で、ケイジロウと同様な事情もあり、
いつか、二人を会わせたいと思っていた。
昨日は元スタッフのハルキが
駐在先の高松から出張で上京するついでに
店に寄る、ということがあり、
それを知ったハルキと仲良しのケイジロウが
久しぶりに来てくれた。
そこに居合わせたネモトちゃんを
やっと紹介することが出来た。
色々な既婚者ゲイの中で、話を聞くと
二人とも夫婦円満、そして子供も
こよなく愛しているようだ。
一番は仕事、2番目に家庭、
そして万が一、好きな男が出来た時には
3番目になる、というのも
同様の考え方のようだった。
彼らに聞くと、店に寄っては
とても少数だけど、既婚者はお断り、
というゲイバーもあるらしい。
これには驚いた。
それぞれの事情があり、
僕もそんな端くれになっていたかも知れないのだ。
奇しくも、そんな同じ日に
地方都市に住む既婚者のお客さんから
SNSで知り合った男性と何度か会い、
やり取りの末、付き合うことになったと
連絡があった。
お互いの家庭を守りながらも、
出来るだけ無理しないように
付き合っていくと言う。
それじゃ、不倫じゃないか、という人や
そもそも嘘つき呼ばわりする人も
それなりに多いだろう。
色々な理由の中で、大人として自分なりの
ルールを決めていく。
それは、ゲイであれ、ストレートであれ、
いた仕方がないことだと思う。
同じ愛情とは言わないけれど、
何方向にも愛情を持つことが出来る人も
世の中にはいる。
それがただの遊び人、変態かと言われると
そうかも知れないが、その心の中は
誰にもわからないのだ。
出来る限り、人に迷惑をかけない、
傷つけないという努力をした上で、
人は自由に生きることを選択する
理由はあるのだ、そう思う。
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