昨日、来てくれた30歳のゴウちゃん。
彼は母子家庭で育ち、高校卒業してから
アルバイトで生計を経て、
通信教育で大学を受けて入ることが出来た。
ただ、その先がかなり大変だったらしい。
とにかく、アルバイトで時間がないので
勉強出来ない。だから成績も上がらない。
そもそも、子供の頃から母親が忙し過ぎて、
勉強しろとも言われず、そういうクセが
ついていないのが致命的だったと言う。
自分は頭が悪い。人にもなかなか追いつけない。
そういう思いが、頭の中で常に
グルグルとする。
大学に行きながら、21の時に初めて行った
ゲイバーでは、同世代がみんなキラキラして見える。
少し年上だけど、有名企業に入り、
素敵なスーツを着ている人たち、
同い年で、毎日ジムに通っていて
多くの人からかっこいいねと騒がれる人たち。
自分はジムに行く時間も金もない。
たった1時間、バーで飲んで帰るのも
お金と時間を心配し、
酔っ払うこともなく、次の日の授業の予習をしながら
途中で寝入ってしまう。
自己嫌悪にさいなまれながら、ゴウちゃんの
唯一の救いは、いつも心配しながら
電話やメールをくれる母親だったと言う。
すごく美人で、水商売などすれば
いくらでもお客が付くはずのゴウちゃんの
お母さんだが、それでも田舎の小さな工場で
働いていた。
彼女はゴウちゃんに勉強よりも大切なのは
人を尊敬すること、そして尊敬されるような
人間になること、を教えてくれたのだと言う。
彼はそういうお母さんの言葉を守りながら、
大学を卒業し、自分で多くの勉強をしながら
小さなIT企業に入ったのが25歳。
そして、なんと去年、自分の小さな会社を
持つことが出来たのだと言う。
昨今、「親ガチャ」という言葉が、世の中を
賑わせている。
親が裕福で余裕があるか、どうか、ということが
その子供のあらゆる人生設計に
繋がっていく、という話だ。
ここまで来ることにかなり苦労したゴウちゃんは
一部はわかる気がする、と言う。
ただ、彼が人生にとって大切なのは
親の経済力などよりも、愛情なのだと話す。
彼がここまでやって来られたのは、
何よりも彼のお母さんの絶え間ない応援、
そして愛情のおかげだと。
加えて、3年前にバーで出会えた年上の人の
心の支えとやっぱり深い愛情だったと言う。
おそらく今のゴウちゃんは、彼が10年前に
ゲイバーで出会ったどんな人たちよりも
ずっとキラキラ輝いているのではないか。
そう思わせてくれた彼の言葉だった。
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