2021年05月16日

ドメニコ・スタルノーネ「靴ひも」を読んで

イタリアの作家が書いた小説「靴ひも」。

今回、この本を読むきっかけとなったのが
今、オンラインで開催されているイタリア映画祭で
配信されている同名の映画の紹介があり、
「とにかく、映画よりも本が面白い!」
と言われていたため、
早速、読んでみた。

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登場人物は、夫婦(20代後半から60も過ぎた二人を
描いていく)と、二人の子供(姉と弟)、
そして夫の愛人がメインだ。

小説は三章に分かれていて、
第一章は、妻から夫への手紙だ。
結婚して12年で女を作り、彼女の元へ
出て行ってしまった夫。
それから4年経過して、
彼に送った文面が綴られる。

「あなたは浮気によって、いかに私を裏切り、
自分はどれだけ傷つけられたか」という
怒りとも悔しさとも言えない言葉が
延々と並んでいる。

第二章は、まったく文体も代わり、
夫の独白だ。
第一章から、30年近く経ち、
年老いた二人は、一見、元のさやに
戻っているようで、連れ立って、
ヴァカンスへ出かけるところから始まる。
しかし、それぞれのその心の底には
当然のように色々なモノがある。

過去、分かれていた時期、子供と会いに
たびたび家を訪れた自分と
妻、そして愛人との間に
どんなことが起こったのか。

そして、ヴァカンスから
帰ってきたマンションは、
部屋に強盗らしき人間が入った形跡がある。
家中、めちゃくちゃに荒らされ、可愛がっていた
猫の姿さえいなくなっている。

第三章では、この強盗らしき人間と
その行為を見せながら、
身勝手なふるまいで家族を壊した夫と、
感情的にぶつかっていき、暴言を吐き続けた妻を
一章、二章とはまったく違う角度から
書かれていく。これまた文体も違う。

その二人のどうしようもない傲慢な人間の哀れ、
それでもでも、いたしかたない不甲斐なさが
露呈されていく。

タイトルの「靴ひも」は、
この夫が自分の息子と
同じ結び方で結んだ靴ひもを通じて、
家族の絆、人間の結びつき、が
タイトに見えながらも緩いモノかを表しているようだ。


なかなか先が読めない、というサスペンス色も含めて
非常に面白く読むことが出来た。
しかしながら、僕は
その登場人物それぞれに
どこも共感出来ない、という
心地悪さも同時に感じた。

ちなみに、オンラインで同名の映画も観たけれど、
小説では客観的にしか描かれていない
夫の愛人が、かなりクローズアップされている。
それはそれでわかり易くはなっていたけれど、
小説のどうなるんだろうか、という
ワクワク感は欠けていた。

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posted by みつあき at 17:33| Comment(0) | 書籍 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする