昨日書いたデヴィッド・バーンを初めて
僕が知ったのは、故今野雄二氏が
ミュージックマガジンという雑誌で
取り上げていたことだった。
今野さんが、大橋巨泉司会の11PMという
深夜番組で、男好き(つまりはゲイ)扱いを
されていて、常に笑いながら交わし、
決して全否定していなかった。
彼のそういう部分が、
個人的には何だか好感が持てた。
今野さんが本当にゲイであったか、どうかは
他の多くの著名人が実際、公言もしていなければ、
誰かと付き合ったりセックスをしたり
している事実もないため、わからない。
まあ、そんなこと、どうでも良いことでもあるけれど。
そんなこんなで、今野さんを通して
知ったデヴィッド・バーン率いる
トーキング・ヘッズの来日公演を観たのは
2丁目から歩いてもすぐ、という
当時の新宿厚生年金会館。
20代中盤だった。
ストレートの友人と行ったのだが、
前から10列目ほどの非常に良い座席だった。
彼らが登場すると観客は総立ち。
僕らもすかさず立ち上がっていた。
(今は極力、ずっと座って観ていたい、
と思うのだけれど。笑)
ところが、僕らのすぐ前の座席にいる5、6人は
ずっと座って観ていて、その前の座席が
一列全部、空いていたのだ。
5、6曲、終わった頃だっただろうか。
僕の友人が「あの空いている座席に
移動しようぜ」と言い、2列前の座席目掛けて
僕らは移動した。
そして先ほどと同様、
立ち上がって観ていたのだが
僕の真後ろの座席の人間が、ドンドンと
僕の椅子を蹴る。
うしろを観ると「座れ!」と怒鳴る。
彼の横にいた女性が、「すみません。
私たちの席なんです、そこ」と言われる。
おそらく彼らは自分の前の客が立たないように、
前の座席一列を買っていたのだろう。
それよりも、驚いたのは、僕に座れ!!
と怒鳴ったのは、当時ものすごく有名な
ファッション・デザイナーだった。
オシャレに疎い僕でさえ、
よく彼の顔は知っていた。
それくらい当時メディアに
出ている人だったのだ。
僕らは、すごすごと、自分たちの座席に戻った。
心の中では何だか申し訳なく、
恥ずかしい気持ちを持ちながらも、
それでも彼らの素晴らしいライブに
酔わされた一夜となった。
しかし、驚くのはこのあとだった。
ライブが終わり、友人と軽く
食事をして別れてから、僕は
2丁目近く(きちんと言うと四ツ谷)にある
ハッテン場に行ったのだ。
ライブから2時間後くらいだった。
なんと、そこにさっき僕が移動した座席を
蹴った彼がいた。
ゲイだと聞いたことはあったけれど、
まさかこういう形で、それも一夜に二度も会うとは。
幸か不幸か、彼と一戦を交えることは
なかったけれど、僕の人生サプライズの5本の
指に入る1本、という出来事だった。
デヴィッド・バーンと聞くと
まだ、あの日のことが忘れられない。
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