ベンちゃんは、四国地方に実家がある
IT系で働く35歳。
実は去年の年末に実家に帰ろうとしたら
彼の母親から「こういう時期だから
今回はやめて。お父さんも持病があるし」と言われ、
帰省は断念した。
孝行息子のベンちゃんは、
毎年、正月、お盆は必ず帰省していて、
去年のお盆、そして今年の正月と
帰らなかったのは、上京して初めてらしい。
正月が終わり、2月に入った頃、母親から
高熱が出て、PCRを受けに行ったら
コロナだったと連絡があった。
「お父さんも受けたけれど、
今のところ、大丈夫だから
私だけ入院をすることになった」と言う。
ベンちゃんのお母さんは70歳。
入院先の病棟では、本当に病院スタッフが
ものすごく良くしてくれるけれど、
自宅に一人残しているお父さんを
毎日心配していると言う。
ベンちゃんは、こういう時に
実家に帰る事ができず
一人東京で悶々と仕事をしていることに
とっても自己嫌悪になるのだと言う。
日々、ベンちゃんは、ご両親とは
それぞれ、携帯のビデオ通話で話をするようだ。
自宅で自炊をしていながら話す父親や
入院先でテレビを見ながら話す母親。
一昨日、お母さんは「震災から10年。
あの時に津波で流された人や、
残されたご家族を思うと、
コロナになっても
こうして、病院で過ごすことが
出来る私は幸せだと思う」
そう言いながら、しゃくりあげて泣き、
ベンちゃんも、もらい泣きしたらしい。
震災に、大型台風、そしてコロナ。
次々に起こる未曾有の事態や
想像していなかったことが、
これからもあるだろう。
それに打ち勝っていくのは、
ベンちゃんやご両親が
こうやって繋がっているように、
人と人との関係や、そこに生まれる
愛情なんだろうなあ。
そんなことを思わずに
いられないベンちゃんの話だった。
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