2018年06月21日

ジャニスの言葉

先日、ここでも書いた
死んだ友人のヤスのことを知らせてくれた
女性ジャニスと改めて連絡が取れ、
ニューヨークのスターバックスから
skypeを使って2時間、色々な話をした。

彼女はヤスと音楽関係の流れで知り合って
25年くらいになるのだそうだ。

僕がほぼ知らなかったヤスの最後の25年間。

そして彼女が知らない僕の知っている
10代から20代のヤスの話。


もちろん、僕の場合はほぼ歴史もなければ、
事件もない。
その多くは、二人でヤツの部屋で聴いた
数々のロック・アルバムと安い酒の思い出だけだ。

「みつあきさんは、ヤっちゃんのこと、
好きだったのよね」

「うん、そう思う。まだ、男との恋愛経験も
なかったし、よくわからないけど。」

ヤスが帰らぬアパートの玄関で夜を明かして
待っていたこともあったし、
ヤツがバイトに行き、一人彼の部屋に残された僕は
彼の脱ぎ散らかしたジーパンや、
タバコの吸い殻をかなりドキドキしながら見ていた。

恥ずかしくなるほど、若かった。


「あたしもね、もう結婚してたけど
ヤッちゃんのこと、好きだった。」
ジャニスはそう言った。
「でも、ジャニスには旦那がいるじゃないか
ヤスはいつもそう言って笑って、逃げた。」
ジャニスはそう言う。


ジャニスは恋多き女なのだそうだ。
人を好きになることは罪じゃない。
マスコミで騒ぐみたいな不倫イコール悪みたいなモノ、
私はどうでもいい。
人が人を愛すること、それが何が悪いのか、
私にはわからない、と。

嫉妬心っていうのも私にはない。
自分が好きな人が愛する人に対して、
何故やっかむのか。
自分が死ぬほど好きな人間が好きな相手を
とことん、愛したい、私ならそう思う、と。


ジャニスは、若い頃、学校を卒業し、
一流化粧品会社に就職した。

合わなかった。
人の気持ちや心を無視して、
身の回りのことばかり取り繕う「容姿こそ一番」
という考え方が、まったく合わなかったのだそうだ。

ジャニスはその後、養豚所で働く。
化粧品会社の女同士の陰口や
人間関係にほとほと嫌気が指していたのだそうだ。
豚は陰口を言わない。
豚に何を言ったところで、ブーブーと鳴いているだけだ。

そこで今現在の旦那さんに会ったのだそうだ。

彼女は必死で豚を育てる。
多くの人たちに食べてもらうために、必死で育てる。
そして、良い時に、豚の額めがけて
大きなトンカチのようなモノで一撃する。

いかに苦しませることなく、一気に殺すか。
それが彼女の使命だと言う。


子豚の頃は、彼らを襲う野良犬や野良猫がいる。
子豚を食べてしまうのだそうだ。
彼女の育てた豚が多くの被害に遭う。

彼女はそういう野良犬、猫を見つけると
有無を言わさず殺す。
昔は追い払っていたけれど、
払っても、払っても、子豚を食べに来る。

大切な食いブチ。生活の糧。
それを殺す相手は犬や猫でも許さない。

ジャニスの家には犬も猫もいる。
何匹も病気で死んだりしながらも、
それでも大事に育てている。
心から愛している。
夫や、数々の男や、息子たち、
そしてヤスと同様に。

でも、自分が愛する人や動物と、
それに被害を及ぼすモノとはまた違うのだ。

ジャニスは言う。

「人は自分のこと、とっても変わってると言う。
怖いおばちゃんとも言われる。
人に嫌われることなんて、屁でもない、
そう思っている。
人間なんて大嫌い、いつもそう思ってた。
でも、愛してやまない人間もいたりする。
そういう矛盾の中で、
自分の生を全うする。

ヤスもそうして、生を全うしたんだ、そう思う。」

どういう理由があっても、僕自身は
動物を殺す、ということは出来ないだろう。

事実だけを耳にすると、おぞましいことだと
思う人も多いだろう。
ただ、単にそれをやってのけるジャニスが
残酷な人間とは言えない。


長い旅の中で、ジャニスと話をした2時間は
僕にとって、旅行で何を観た、というよりも
ずっと深く、ずっと重く貴重な時間だった。


ヤスのことを思い、
彼が繋げてくれたこの女性のことを思い、
僕が繋がっているたくさんの人たちのことを考えた。

人が僕をどう思っているか。
人にどう思われたいか。
誤解されないように、
誤解を与えないように、
そんなことに振り回されていた時期も長くあった。

今でもない、とは言えない。

でも、この年齢になり、少なくとも自分がどうあれるか、
どうありたいか、
今まで受けた影響を、どういうふうに
人に伝えていくことが出来るだろうか。

マチュピチュの、遥かにすぐ目の上にある空も、
ニューヨークの、まったく手が届かないほど高い空も、
そしてたぶん雨が多く、どんよりと湿った日本の空も、
すべて繋がっており、
それぞれが多くの「生きていること」「死ぬこと」を
ぼんやりと考えながら、
今、2018年で息をしているのだ、と。

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posted by みつあき at 07:06| Comment(0) | 人生 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする